NaNoMoRaL|普段は本音を言えない私の代わりに、パセリさんが作った曲が言ってくれているように思います

NaNoMoRaL|普段は本音を言えない私の代わりに、パセリさんが作った曲が言ってくれているように思います

雨宮未來の笑顔がとにかくいい。ステージ上でひまわりのごとく咲き誇るそれは、企みを隠し持ついわゆる“アイドル・スマイル”や“営業スマイル”とは一線を画す、他意の無い自然な、そして混じりっけのない純粋な笑顔であるゆえに、それを受け取る者に様々な情動をもたらすほどに尊く、気高く、力強く、そして優しい。だが、ステージあるいは会場を充たすのは笑顔だけではない。がなり立てながら吐き出される苦悩や、挑発的な言葉の連射がもたらす狂気や、ふいに覗かせる寂しげな表情が醸し出す虚無感や哀愁のようなものもある。それらは、鮮やかなコントラストを描くように巧みに組み合わされ、彩り豊かな模様を織り成す――のではなく、ただひたすら本能のままに吐き出されるのだ。人間誰しもが抱く重層的な感情が作為なく晒け出されるがゆえに、幸せや悲しみや怒りがそれぞれに生々しく発色し、そこにこの上ない説得力が生じるのだ。

そして、雨宮未來がこんな風に感情を吐き出すことができるのも、梶原パセリちゃんの編み上げる高品質なトラックがあってこそだ。小気味良いギター音や歯切れ良いビート、そして煌びやかな電子音が精巧に折り重ねられることで構築された、ニューウェイヴやブリットポップやパワーポップなどを想起させる“洋楽っぽい”サウンド(梶原パセリちゃん曰く「洋楽は全く通ってきていない」とのことだが)。それは、雨宮未來が心置きなく感情を吐き出せる“場”を作り、同時にそれらにえも言われぬ臨場感をもたらしている。

忘れてはいけないのが、梶原パセリちゃん自身のヴォーカルだ。雨宮未來と時に旋律を分け合い、時にハーモニーを重ねる梶原パセリちゃん。曲中では二人で一つの人格が描き出されているが、梶原パセリちゃんは、雨宮未來にとっての助言者のような、共感者のような、警告者のような立ち位置で、彼女とマイクリレーを行う。その声は、聴き手の情動を揺さぶる雨宮未來の歌声がより映えるようにその場を一旦落ち着かせたり、あるいは、彼女の歌声をさらに情感を溢れさせるかのごとく焚き付けたり、という役割を担う。

雨宮未來(ヴォーカル)と梶原パセリちゃん(ヴォーカル、コーラス、マニピュレーター、プロデューサー)から成る、今大注目の男女アイドルユニット、NaNoMoRaL。それぞれアイドル・グループ/バンドでの活動を経て、2017年にエモクルスコップというグループの“メンバー”と“プロデューサー”という立場で出会う。そこから発展し、“雨宮未來のソロユニット”という形で2018年3月9日にデビュー・ライブを敢行。7月にはミニアルバム『nisan ka tanso』をリリース。現在も精力的にライブ活動を行い、アイドルシーンに一石を投じている。

様々な苦難を乗り越え、奇跡の邂逅を果たし、魔法のような音楽を世に問うているNaNoMoRaL。雨宮未來と梶原パセリちゃんのお二人にお話を伺った。

「人を信用しないぞ」みたいなオーラを醸し出していました(未來)

――未來さんは「あヴぁんだんど」と「エモクルスコップ」というグループで活動してたんですよね。

雨宮未來(以下:未來):あ、はい。

――未來さんとパセリさんが出会ったのはエモクルスコップの時ですか?

梶原パセリちゃん(以下:パセリちゃん):はい。そうです。

――パセリさんは当時“運営”だったんですよね? 運営と作詞作曲のみで…。

パセリちゃん:はい。プロデュースも含め、大人がやることを全部やってました。

――お一人で?

パセリちゃん:一人でですね。あとは振付の先生。関わる人はそれだけでした。

――エモクルスコップは、サウンド的には今と通じるものがありますけど、かなり“アイドル”に寄せていた感じですよね。

パセリちゃん:寄せてる…そうですね。

――メンバー4人のダンスや佇まいはアイドルっぽい感じがしましたけど、でも、未來さんは結構シャウトとかしてましたよね?

未來:してました。なので、最初はびっくりされましたね。「やろう」と思ってやったわけじゃなかったんですけどね。テンションが上がって、気持ちが出ちゃったんですよ。デビュー前のレッスンの頃とかはそんな子だと思われてなくて…。っていうか、あまり喋らないような子だったので、ステージ上でそんな「暴れる」みたいな感じになって結構驚かれました。

――あまり喋らない子だったんですか?

未來:そうです。最初は“壁”がありました。パセリさんとも壁があって…。めちゃくちゃありました。「人を信用しないぞ」みたいなオーラを醸し出していました。

パセリちゃん:「大人とは一線置いてます」みたいな雰囲気はすごくありました。

――ある意味「扱いにくそうな子」だったんですか?

パセリちゃん:いや~、でも、それぐらいの子の方が、わかりやすくて良いですね。どっちかって言うと、アイドルの子って運営に対しても“アイドル”で来るんで。それはもう意図が分かっちゃうじゃないですか。未來さんはそういう子じゃないだろうし…。だからこういうぐらいの方が扱いやすいです。

――「気に入られよう」「いい扱いをしてもらおう」と思って、ある種“媚びてる”みたいなアイドルもいる中で…

パセリちゃん:そう。そんなのは別にいいんで。それがなかったからありがたかったです。

未來:よかったぁ!

――では、エモクルで出会って、そこから発展したのがNaNoMoRaLということですよね。それが今年、2018年3月9日からですよね?

未來、パセリちゃん:はい。

――で、3月9日のお披露目ライブ「ナノモラルハジマル」。でもその時って「雨宮未來のソロプロジェクト」といった打ち出し方でしたよね?

パセリちゃん:そうです。一応今もそうなんですけどね。

――でも、もうほとんど二人組みたいになってませんか?

未來:ややこしいって言われます(笑)。

パセリちゃん:いや、これもいろいろあって…。そもそも“アイドル”っていうジャンルでやりたいと思っていたので、「僕がいるのはおかしいだろ」と思うんですけど、「一人でステージに立たせるのはいろいろと難しいんじゃないかな」とも思い…。それは「未來さんだから」っていうわけじゃなくて、なんというか一人じゃ映えない部分もあるだろうし。なので“ソロユニット”って謎の言葉になるんですけど。一応「“雨宮未來のソロ”だけど、ステージには一人で立ってるわけじゃない」っていうような状態を作りたかったんですよ。だから2人組ってより1.5人組みたいな感じです。

――でも、そのお披露目ライブの時に「思ったよりパセリさんが出過ぎてる」って未來さんがおっしゃってましたよね?(笑)

未來:「結構前出るな」って思いました(笑)。

パセリちゃん:いや、僕もホントに黙って後ろで「いろいろやってよう」と思ってたんですけど。

未來:お客さんの反応が温かかったんですよね。

パセリちゃん:そう。お披露目ライブは自分たちの主催だったので、いわばホーム状態じゃないですか。で、お客さんの反応がすごく良かったんですよ。僕もまあ、得体の知れない人間ではなくて、前のグループのプロデューサーでもあるので、そういう意味ではすごい温かく迎え入れてくれて…ってなったら、じゃあ「煽られたら出るしかないじゃん」って。それが今もずっと続いてるって感じです(笑)。

――あの時はでもギターを弾かれてましたよね。

パセリちゃん:そうです。何もやることがないからギターでも弾いてようと思ってたんですけど「やること結構あんじゃねえか」と思って(笑)。煽られるし。だから、ギターは1曲目のイントロしか弾いてないです。

――そうですか。僕はダイジェスト映像を観ただけなんですけど、ギターは最初だけだったんですね。

パセリちゃん:そう。すぐに置きました。

――なんか途中で前に出てきて何かやられてましたよね?

パセリちゃん:何かやってますね。

――お客さんにマイク向けたり。

パセリちゃん:そういうつもりは全く無かったっていうか、そういう状態になると思わなかったですね。

――じゃあ、今も一応“ソロユニット”という形なんですね。

パセリちゃん:もう何でもいいような気がしてきましたね、最近は。

――当時はコンセプトみたいなものって、何かあったんすか?

パセリちゃん:まあ、“ソロユニット”っていうことと、後は、ちょっと闇の部分もあった方が良いなとか、そういうことは考えていたんですけど、「これはこうじゃないといけない」みたいなコンセプトは別にないですね。

未來:すごい自由にステージングをさせてもらってます。「ここでこうしろ」とかないので。

パセリちゃん:二人ともない。

未來:勝手にやらせてもらってます。

――ネット上で「アイドル界にちょっと違和感」みたいなコンセプトを見つけたんですが…。

パセリちゃん:あ、それはありますね。

――それは今でも生きてるあれですか?

パセリちゃん:そうですね。だって僕がいるのおかしいじゃないですか(笑)。

未來:ずっと違和感(笑)。

パセリちゃん:「アイドルとしてやっていきたい」とはずっと思っているんですが、今ってアイドルもすごい多様化してるじゃないですか。音楽ジャンルという意味でも。その中でも、ちょっと異端のような存在になると思うんですよ。男女2人というメンバー構成も。そういうところは“違和感”かなと。あとセッティングをしなきゃいけないんで。

――機材を持ち込まないといけないんですよね。でも、NaNoMoRaLのサウンドを聴いたり、メンバー構成を見たり、ステージを観たりすると、人によっては「アイドルなのかどうなのか」みたいな疑問って出てくると思うんですけど、あくまで「アイドル」と主張するわけですね。

パセリちゃん:はい。もう「アイドル」って言い張ってます。

――それは何か理由がありますか?

パセリちゃん:う~ん。出演するライブがアイドル系ライブというのもありますし…。でも「アーティスト寄りだね」みたいなことを言われることは多いんですよ。それもちょっと気に入らなくて…。僕は「アイドルは素晴らしい」と思ってこの仕事を始めたので、「アーティスト」って言われるとマイナスに聞こえちゃうんですよね。そんな風に言われると「うるせー」って思っちゃうんですよ。だから「いやアイドルです」ってちょっと意地になってるところはあると思います。

――なるほど。今アイドル界ってほんとに混沌としてて、「名乗ったもんがアイドル」みたいなところがあって。出自がアイドルな人ほど変わったこと、振り切ったことやろうとをしている一方で、アイドル外から来た人が嬉々としてアイドルをやってるみたいなケースもあったり。フィロソフィーのダンスなんて、バンドやってた人やシンガーソングライターといった“アイドル外”の人たちがある意味アイドルを演じていて、それが面白かったり…。

パセリちゃん:そう。だから(フィロソフィーのダンスのプロデューサー)加茂さんの考えはすごいわかります。インタビューもいろいろ読ませていただいたんですけど、加茂さんの考えに共感できるところが多いと思います。

――では、未來さんはどうなんですか? アイドルがやりたいですか?

未來:そうですね。私は「アーティストになりたい」と思ってたんですよ。そうですね…3年ぐらい前までは。でも、今はアイドルっていいなって。アイドルは寿命が短いものでアーティストは長く続けられるという風に思っていたから昔はアーティストになりたいって言ってたけど、NaNoMoRaLを始めたらそんなことを考えることもなくなってアイドルでも全然長く続けられるじゃんって思うようになったっていうか。分かりますか?何て言えばいいんだろう…。

――あぁ、はい。

パセリちゃん:そっちの方が都合がいい。

未來:都合がいいっていうか…。何歳になっても「アイドル」って言ってたら若い気持ちでいられるし、何でも許される感じがするので…(笑)。

――あぁ、はい。「何でもあり」という感覚はありますよね。好き勝手やっている人たちもいます(笑)。

未來:確かに。はい(笑)。

――“掟なし”という感じですよね。例えば、バンドだとしたら、各メンバーが発想する範疇の中でしか出来ないですし、それも何か縛られていて柔軟性がない印象なんですが、アイドルと名乗ることで「自由な発想で何でも出来る」みたいな感覚はありますよね。

未來:あと、アーティストだと“一本柱が立つ”感じがするんですよ。でも、アイドルだったらヘラヘラしてても平気っていうか(笑)、“素の自分”でも認めてもらえる感じがありますよね。

「人間やるのやめた」をやると、観てくれてるアイドルさんの中には結構びっくりしちゃう方とかいるんですよ(笑)(未來)

――「アイドル界に少しの違和感」というコンセプトとのことですが、NaNoMoRaLでは前のグループと比べて、何か一歩二歩踏み込んだ曲作りや音作りをしていますか?

パセリちゃん:してますね。一番はやはりテンポじゃないですかね。曲のテンポががっつり下げられるようになったっていうか…。アイドル楽曲を書き始めた頃に、今でいうと「サーチライト」や「モノクロマジック」ぐらいの曲のテンポを書いたら「遅い」って言われたんですよ、お客さんに。

未來:えー、そんなこと言われたんだ。

パセリちゃん:そう。「あんまりノレない」っていう…。まあ、面と向かって言われたわけじゃないですけど、そういう話が出てたみたいで…。だから前のグループの時は、テンポに一番気を遣いました。

――BPM速めで、コールが入って「オイオイオイ!」ってようなものを求められていた、と。

パセリちゃん:はい。前のグループの時は、めちゃくちゃ理論立ててやってたと思いますね。でも、今はそれがない。

―― そこから解放されたわけですね。

パセリちゃん:そうですね。前はBPMが150~220まででしか曲を作らなかったのが、今は一番遅いので90ぐらいになりますから。90から200まで拡がって。遅めの曲をやっても、盛り下がらないっていうような状態になってるので、すごく自由度は上がりましたね。

――そういうふうに作られた曲を未來さんどう捉えてますか?

未來:なんだろう…。私は最近「尖った曲をやりたい」って注文してるんですよ。NaNoMoRaLだから許される感じのものを…。沸いてるだけじゃ、盛り上がってるだけじゃないなっていうことを、対バンした方々から教わりました。ライブ中は沸いてるわけじゃないのに、ライブが終わったらみんな大拍手みたいな。アンコール始まっちゃうんじゃないかぐらいの…。そういうバンドさんとかを観て、いろんな楽しみ方があるなって。今「パセリさんが昔やってたバンドみたいな曲をやりたい」って言ってるんですよ。すごい難しくて、私に出来るかちょっと不安なんですよね。

――それはパローネポッピーですか?

未來:そうです!今は結構「尖ったことをやりたい」って言ってます。

――いやでも、今も尖ったこと、やってるじゃないですか。

未來:やってます?

パセリちゃん:いや、まだ足りない…。

――まだ足りないですか。それこそ「ハジマル」にしてもそうですし、「人間やるのやめた」なんてホントに“一人芝居”を観ているみたいですよ。

未來:「人間やるのやめた」をやると、観てくれてるアイドルさんの中には結構びっくりしちゃう方とかいるんですよ(笑)。

――僕もびっくりしました。

未來:後ずさりしてるのとか、ライブ中に見えちゃったりするんですよね。

――後ずさりですか。 引いてるんですかね。

未來:そう、引いてる感じ。何だろう。メンバーの後ろに隠れちゃうみたいな女の子とかいて(笑)。

――えぇ!

未來:怖くて「うわっ」みたいになっちゃってる子とかいるのが見えて、「うわ、引いてる」って思いながらも、やってます(笑)。なので、人によっては「尖ってる」って思う人もいるんですかね。

パセリちゃん:いや、確かに「人間やるのやめた」に関しては、結構「攻めたかな」と思います。NaNoMoRaLを始めるって決めて、一番最初に「やろう」って案が出た曲ですね。

――まあ言えば、あの曲が「やりたいこと」だったっていうことですか?

パセリちゃん:そうですね。これがやりたくて始めたって言っても過言ではないぐらいです。

――仮歌はパセリさんが歌ってるんですよね?

パセリちゃん:僕です。

――仮歌もあんな感じだったんですか?

パセリちゃん:いや、この人の方が上手いですよ。

――ある意味、アドリブというか即興劇のような感じがします。

未來:嬉しい。

――「そういうふうにやって」って注文したわけですか?

パセリちゃん:いや、ライブでどんどん磨かれていったと思います。

未來:毎回同じようにはやりたくないなと思っていて、「ここで感情入れたらどういう受け止め方になるんだろう」とか毎回考えたりして、抑揚を変えてみたりしてます。

――「磨かれてきた」とおっしゃいましたけど、それこそデビュー・ライブの時から、あの“全てを吐き出す”ような感情表現が見られました。そういった表現ってどこかで磨いてたんですか?

未來:う~ん。ステージ以外では闇の部分を見せないようにしてるんですよ。だから多分それが全部ステージで出てるんだと思います。

パセリちゃん:デビュー・ライブの時の「人間やるのやめた」は、確かにちょっと鬱憤みたいなものが混じってる気がしますね。僕はあれぐらい出来るのは前のグループの時から知っていたので…。ただ、あの時から比べてもかなり成長してると思っていて、今は見違えるように良くなってると思います。

――では、あれって、ある意味演じてるというよりリアルな表現って感じですか?

未來:そうですね。でも自分を出しすぎないようにも加減をしてますけど。

パセリちゃん:うん。そう。ちゃんと見せられるものにして。

未來:なので、これまでのことがライブに生かされてるかもしれないです。今まで生きてきた私が…。

――そういう意味では、前のグループでいろいろ苦労もされたわけですけど、それは決して無駄ではなかったと。

未來:そうですね。無駄ではなかったと思います。当時は辛いこともありましたけど、それがあったからこそ今表現できる部分もあると思います。

パセリちゃん:確かに。だからデビューライブの時の「人間やるのやめた」は、僕自身もう一回観たいなと思うぐらいです。ある意味、人に見せられるようなものじゃないかもしれないので…。

未來:私の感情が全部出てます。

――その時って気持ち良かったですか?

未來:気持ち良かったです(笑)。そういう感情は普段は吐き出せないので…。SNSとかでも言わないようにしてるんです。あと、歌詞が私の言いたいことに沿ってくれてる感じがします。

パセリちゃん:デビュー・ライブでああいうふうにできたのも、あの曲が「全部吐き出すよ」っていう意味で書かれているからだと思いますね。

未來:「みんなに今まで言いたかったけど言えなかったことを伝えたよ」みたいな感じだと思います。

パセリちゃん:まあ、間接的ですけどね。

――そもそもアルバム『nisan ka tanso』自体「吐き出す」ということがテーマなんですよね?

パセリちゃん:そうですね。なので、CD盤をパカッて取ったら「spit out」って書かれてあるんです。

――あ、ですよね。では、曲を作る時って、どんな工程で作られるんですか?

パセリちゃん:家でパソコンで「さあ曲作るぞ」って感じで、イントロから作り始めるだけです。並行してアレンジしながら。

――お二人で「どういうのやろうか」みたいな打ち合わせは事前にあったりするんですか?

パセリちゃん:それはないですね。そこまで介入させたことないかもしれない。

――ある意味、作りっぱなしで、投げっぱなしで。

パセリちゃん:そうですね。

――未來さんは、曲を投げられて、ボツにしたりしたことはあるんですか? 「こういうのは歌えない」とか。

未來:いや、そんなことはしないです。ボツなんて。

パセリちゃん:さすがにそれはないな。

未來:全部大絶賛で終わります(笑)。作曲できること自体、私は「すごいな」って思ってるので。

――未來さんは、作曲家・作詞家・プロデューサーとしてのパセリさんのどこかどんな風にいいと思っているんですか?

未來:どこが…。う~ん。詞は綺麗事を言っていないところがいいですね。だから最近、今まで聴いてた曲が全部綺麗事に聴こえちゃって(笑)。

――アハハハハ。

未來:そうした曲は自分の事として考えられなかったんですよ。でも今は自分だけのために作ってくれてるじゃないですか。だからすごい共感出来るんですけよね。他の曲って、何だろう、私に無いことを綺麗にメロディーに乗せてるだけに聴こえちゃって。「良い曲だな」っていうものもあるんですけど、NaNoMoRaLの曲よりも深入りできなくなっちゃいました。だから、最近はずっとデモを聴いてます。

――なるほど。アイドルって“偶像”でもありますから、「自分ではないもの」「理想とされるもの」を創り上げて、それを楽しんでもらうっていうのも一つのアイドルの形じゃないですか。むしろそれが主流だと思います。それはそれで僕は否定はしないですし、そういうものがあってもいいと思うんですけど、ただ、未來さんは本音を歌いたい、と。

未來:何だろう…。普段は本音を言えない私の代わりに、パセリさんが作った曲が言ってくれているように思います。

パセリちゃん:そうかもしれない。

笑顔こそが彼女の持ってる一番の才能だと思います(パセリちゃん)

――ライブを拝見すると、曲の良さはもちろん、未來さんのヴォーカルや歌による“演じ方”が素晴らしいんですが、とにかく未來さんの笑顔が印象的ですよね。

未來:えぇ!?ホントですか?

パセリちゃん:そう。歌詞はめちゃくちゃ暗いことが歌われてると思うんですけど、あの笑顔によって全部それが救いになるんですよね。僕はマイナスなものがマイナスで終わってしまうものあまり好きじゃなくて、最終的にはどんでん返しして、ハッピーに終わるものが好きなんですけど、その役割を担ってくれてるので。

未來:えぇ~良かった。

パセリちゃん:よく言われるのが「NaNoMoRaLの現場ってみんなニコニコして観てる」っていうことなんですよね。

――確かにそうですね。

パセリちゃん:笑顔こそが彼女の持ってる一番の才能だと思います。

未來:え~嬉しい。

――今のアイドル界って病んでることを“売り”にしてる人って多いじゃないですか。

パセリちゃん:多いですね。

――ある意味、“演技”してる人もいると思いますよ。あるいは“盛って”たりとか。でも、未來さんの場合は、あの笑顔があるからこそ、そこに見え隠れする“狂気”や“苦悩”に真実味があって、観ている人も共感するんじゃないかな、と。

パセリちゃん:真逆なことをやってるからこそですね。

――押し付けがましくないからこそ説得力を帯びるというか…。

未來:あぁ、そうですね。さっきも言ったように、普段からそういう部分は出さないようにしてるんです。私、病んでる子がいると本気で心配しちゃうんですよ。たとえそれが演技だとしても本気で心配しちゃうんです。なので、私自身は「それはしたくないな」って…。

――出さないようにしてるということは…全然そういう風には見えないんですけど、やはり結構病んでるんですか?

未來:えぇ~!どうなんだろう。波があるのかもしれない…。

パセリちゃん:いやいやいや(笑)。“営業妨害”になるかもしれないですけど、未來さん、まあまあ暗いですよ。

――そうですか(笑)。

パセリちゃん:まあまあ暗い、ホントに。

未來:やばいやばい(笑)。

――人懐っこそうな印象なんですけど。

パセリちゃん:めちゃくちゃ人見知りです。

――人見知りですか。

未來:はい。構ってくれる人がいると、もうずっと一緒にいちゃうんですね。だから最近、仲良い運営さんとか増えてきて、ずっと一緒にお喋りの相手してもらったりしてます(笑)。

――でも、よく他のアイドルさんとツーショットを撮ったりして、上手く懐に入ってる感があるんですが…。

未來:あぁ、確かに写真は撮ってもらってます。

パセリちゃん:それは努力。これこそ一番の営業妨害になるかもしれないですけど、それは努力だと思います、この子の。

未來:「行こう」って思って、頑張って声掛けに行ってます。「もし自分がそういうふうに声掛けられたら」って思ったら、嬉しいじゃないですか。「きっと嬉しいはず」と思って、勇気出して行ってます。同じ時間に一緒にライブしてるのに、もったいないじゃないですか。せっかく出会ったから「仲良くなりたいな」と思って。

――努力されてるんですね。コミュニケーション能力がすごく高いのかなと思ってたんですが…。

未來:すごい言われます、それ。

――でも、それなりの“闇”も抱えてるわけですよね。きっと、それは“誰も抱えるもの”でもあると思うんですよ。それをそのステージ上で表現出来るから、説得力があるし信頼出来るんじゃないかと思います。

未來:嬉しいです。

――で、NaNoMoRaLはあくまで“雨宮未來ソロユニット”だとおっしゃってましたが、ヴォーカルをお二人で分け合ってるじゃないですか。それは最初から決めていたんですか?

パセリちゃん:いや、ホントはこの人に全部歌わせたいんですけど、逆に「歌ってください」と言われるし…。「え、何で?歌わないんですか?」みたいな感じだったので、割合的には3:1ぐらいで入れるようにしました。

――「私だけ歌わせて」っていう気持ちではなかったんですか?

未來:ソロって歌詞めちゃくちゃ覚えるじゃないですか。なので、負担が大きくて「こんなになくて大丈夫です」って思っちゃって(笑)。「歌詞割りこんなにいらないです」って。なので「歌ってください」って言ったんですけど、「人間やるのやめた」は、まさか私があっちのパートを歌うとは思ってなかったんです。

パセリちゃん:逆だと思ってたらしいんですよ。

未來:そう。

パセリちゃん:そんなわけないじゃないですか!

未來:私はびっくりして「何で私がこっち歌うんですか?」ってなっちゃって。

――なるほど。逆バージョンも聴いてみたい気もしますけど。

パセリちゃん:ライブではやったことがあるんですよ。

――やってるんですね。

未來:昔、ホントたまに。

パセリちゃん:持ち曲がちょっと少なかった時期とかに。

――そうだったんですね。それはちょっと観たいな…。では、そういう意味では、曲を作る際も、あくまで未來さんが全部歌うことを想定しているわけですか?

パセリちゃん:はい。まあでも、デビュー以来僕が歌う部分もすごく増えてきて、「このメロは自分が歌おう」とかっていうのは考えてます。

――全体を聴くと、形式としては、いわば“デュエット”になってるわけじゃないですか。でも…この例えわかるかなぁ……例えば「三年目の浮気」みたいな…わかります?

未來:題名は聞いたことあります。

パセリちゃん:デュエットの定番ですよね。

――そうそう。あの曲は“対話”じゃないですか。でも、みなさんの曲は“対話”になってなくて、ある種「一つの人格を二人で表現してる」みたいな。それは「自分の中の二つの人格」なのか、あるいは「自分を戒める天の声なのか」「自分を助けてくれる、自分の中の別人格」なのか…いろんな想像が出来ると思うんですが、そんな意識はありますか?

パセリちゃん:歌い分けてますけど、歌詞の内容的には一本ですね。それで感情が変わるってことはないです。一曲の中には一つの人格にしてますね。そもそも二人の考えていることはかなり近いと思います。

――なるほど。未來さんはそれを聞いてどうですか?

未來:でも、めちゃくちゃ細かいこと考えてそうですよね?

パセリちゃん:そうでもない。

未來:私より考えてそうなイメージ。

パセリちゃん:でも種類は一緒だと思う。

未來:ホントですか?

パセリちゃん:うん。たとえば、僕ら二人が真逆の性格だったら、未來さんに書いた歌詞を僕が歌うと嘘になるけど、それはないから嘘にならないんですよね。

――なるほどね。そういう意味では、“嘘”ではなく“本音”を歌う。決して示し合せたわけではないですけど、偶然というか、そういった共鳴してる部分がある、と。

パセリちゃん:そうですね。だって、ラブソングとか嫌いだよね。

未來:ラブソング…。

パセリちゃん:アイドルには多いですよね。

――はい。基本そんな感じです。

パセリちゃん:「うるせー」と思うんですよね。「恋愛禁止だ」っつってんのに「好きだよ」みたいな歌詞入れてくるのって。

――それは、お客さんと疑似恋愛しないといけないですから。

未來:そういうことか。

パセリちゃん:それもあれじゃないですか。中学生ぐらいの子がそれを歌ってても刺さらないと思うんですよね。

コール&レスポンスとかして、みんなのストレスが減ったらいいなと思ってやってます(未來)

――では、そろそろミニアルバム『nisan ka tanso』についてお聞きいたします。リリースは2018年7月でしたよね?

パセリちゃん:7月4日かな。6月に先行発売したんですよね(編注:ライブ会場や一部の店舗で先行発売された)。正式なのは7月でした。

――デビュー・ライブ「ナノモラルハジマル」の時には、「ハジマル」「人間やるのやめた」「サーチライト」を披露されました。その他の曲はその後に作ったものですか?

パセリちゃん:そうですね。「もんすた」って曲は、ちょっとテンポが遅い曲なんですけど…

――ラヴァーズ・ロック系の曲ですよね。

パセリちゃん:そう。これは前のバンドでやろうとしてた曲です。未來さんが「いい」って言ったんで、やりました。

――タイトルが「nisan ka tanso」。「吐き出す」というのがテーマとのこと。では、「二酸化炭素」ってどういうものの象徴なんですか?

パセリちゃん:“鬱憤”だと思ってます。「悪い部分を吐き出す」といったイメージですね。だから「とにかくしっかり吐き出すんだ」と。歌詞を書く上でも、結構よく出てくる言葉ですね。もう「タイトルは絶対これにするよ」って言いました。

未來:言われました(笑)。

――それを聞いてどう思いました?

未來:センスいいな、センスの塊だな、って。二酸化炭素をローマ字にするという発想が私にはなかったから、私より長く生きてきたんだな、って思いました(笑)。オシャレだなって。

――ジャケットはすごいシンプルですね。

パセリちゃん:曲以外にあまり情報を入れたくなかったんで。そういう意志の表れだと。

――ここに歌われてることは、自分の中の毒のようなものを二酸化炭素のように吐き出す、といったところでしょうか。

パセリちゃん:はい。

――でも、過呼吸になった時は二酸化炭素を吸った方がいいんですよね。

未來:え~、そうなんですね。

パセリちゃん:あぁ、そう言いますよね。

――酸素を吸いすぎるから過呼吸になるので、手で口を覆ったり、紙袋を口に当てたりして、自分が吐いた二酸化炭素を吸うと治る、と言われています。そういう意味では、悪いことばかりではないんじゃないか、と。

未來:良いこと?

パセリちゃん:そもそも悪いものかどうかもわかんない。

――ですよね。悪いことばかりではない――ということを「呼吸のすすめ」という曲の中でも歌ってますよね?

パセリちゃん:はい。そういうことなんです。その曲の一節「僕の悪が君の悪とは 限らないものね」は帯にも記載してるんですが、そういうことなんですよ。

――でも「吐き出す」ということをテーマにするってことは、ご自身もそうかもしれないですし、もしかしたら多くの人もそうなのかもしれないですけど、やっぱり溜まってるんでしょうか?

パセリちゃん:いや、溜まってるでしょ。

未來:はい。皆さん溜まってると思います。

パセリちゃん:良いことばっかりな人はいないでしょう。

――例えば、どんなことが溜まってますか?

未來:溜まってる…? 最近あるかなぁ。ライブでいろいろ出せちゃってるから。むしろ今は、お客さんに吐き出してもらいたいなって思ってます。

――あぁ、なるほど。

未來:なので、最近コール&レスポンスとかして、みんなのストレスが減ったらいいなと思ってやってます。声を出すことで。

パセリちゃん:そう。そうなんですよ。その鬱憤みたいなのが原動力になると思ってたんですけど、5月ぐらいかなぁ、もう結構楽になっちゃったみたいな。そこからですかね。ハッピーなものになってきたな、と感じるようになったのは。

未來:うんうん。確かに。

パセリちゃん:もちろんテーマは「吐き出す」なんですけど、一気に出せちゃったのかもしれませんね。「やべぇ、これハッピーな感じになっちゃう」とは思いました、その時は。

――それは「やべぇ」って感覚ですか?

パセリちゃん:そうですね。「やべぇ」と思っちゃいましたね。僕は曲書くのにマイナスなものを原動力にしてやってるので「どうしよう」って…。なので、例えば「モノクロマジック」という曲は、アルバム用に作ったんですけど、すごいハッピーになってるんですよね、歌詞が。

未來:確かに!

――それこそお披露目ライブ「ナノモラルハジマル」の時っていうのは、ほんとにリアルに吐き出すっていう行為だったのかもしれないですけど、今や、お客さんのを吐き出す媒介になるというか、きっかけになるというか、そうした役割を担っているわけですね。でも、ライブを観るとまさにそれは感じるところで。未來さんの笑顔があるからこそ、その裏にある“狂気”や“毒”に臨場感が生じ、それゆえに聴き手の中の“吐き出すべきもの”に共鳴するというか…。自分もそれで「吐き出せるかな」って思いました。

未來:嬉しいですね。

パセリちゃん:ありがたい。

――でも、ハッピーになってきて「やべぇ」っていうふうにおっしゃいました。じゃあ、吐き出すための原動力として、何か他にありますか? 例えば世の中のことでいろいろあるといえばあるじゃないですか。

パセリちゃん:腹立つことはいっぱいありますよ。僕あんまり性格は良くないんで(笑)。

――ハハハ。

パセリちゃん:まあ、ちょいちょいイライラはしてるんで、その点では大丈夫なんですけどね。

「バカだよな」って未來さんにとっても自然なんだと思います(パセリちゃん)

――いくつか曲についてお聞きしたいんですが、まあ、とにかく「ハジマル」と「人間やるのやめた」のインパクトが凄いですよ。他の曲ももちろんですけど、この2曲は強力なキラーチューンです。

未來:ホントですか?

――この「バカだよな」っていうのは、平成最後の、そして平成最高の“バカ呼ばわり”ですよ。いや、自分自身のことを言っているので“バカ自省”と言ったらいいでしょうか。

パセリちゃん:そうですね。

未來:でも、私初めて聴いた時、「バカだよな」っていうフレーズに目がいかなかったんですよ。

――えぇ!そうですか。

パセリちゃん:いかにも僕が書きそうなフレーズだもんね。

未來:そうですね。多分今まで聴いてて慣れてたからですかね。なので、この曲を歌った時に「“バカだよな”の曲いいね」みたいなことを言われると、「みんなそこに行くんだ」ってちょっと不思議でした。

パセリちゃん:そう。例えばそこが「愛してる」とかだったら、未來さんも引っ掛かると思うんですよ。「何やってんすか?」みたいな。

未來:ヤバってなるかな。

パセリちゃん:なので「バカだよな」って未來さんにとっても自然なんだと思います。

――なるほど。そういうことですね。

パセリちゃん:通常運転ということです。

――でも、未來さんがそれを普通だと思っても、観客から見れば、未來さんがそれを言うとインパクトがあるんじゃないですかね。そういう意味では、上手いシステムになってるわけですよ。

未來:上手い。良かったです。

――で、特に音源だと、一発目の「バカだよな」が絶品なんですけど。

パセリちゃん:そうです。はい。

――ですよね。レコーディングの時は苦労しました?

パセリちゃん:音とかあんま取れないんですよね…。

未來:そう。音取れない。

パセリちゃん:でもレコーディングは早いんですよ。音程よりも歌い方を重視したレコーディングをしてるので、そこは一発OKだったかもしれないですね。

――なるほど。音程をこだわるより、もっとその時のフィーリングとかを大事にして。

パセリちゃん:そうですね。

――その時は何か特別な気持ちの入れ方とかしましたか?

未來:もうデモ通りにやりました。

――じゃあデモがあんな感じだったわけですね。

パセリちゃん:あんな感じだったと思います。

未來:でも、それを超えたい自分もいて。完璧なデモが送られてくるんですよ。音楽やってた人だし…。

パセリちゃん:アハハ。デモはちゃんと作んないとダメですよね。例えば、初音ミクとかに歌わせたりとか、男性が男性キーで歌ったりとか、っていう仮歌の入れ方ってあると思うんですけど、それだと絶対上手くいかないんですよね。

未來:ちゃんとキーを合わせてきてくれるんです。私の歌うキーに。

――でも女性と男性だとやはり差があるんじゃ…。

パセリちゃん:あんま変わんないです。

――あまり変わらないんですか? 高い声されてますけど、でも女声キーで歌うのはキツくないですか?

パセリちゃん:キツいとこはキツいですけど、出なくはないんで。

――例えば、仮歌っていうのは、人によっては「ジェネリックに、あまり癖をつけずに歌った方がいい」っていう考え方もあると思うんです。

パセリちゃん:自分の歌い方を知ってる人はそれで良いと思います。でも未來さんに関しては「こうやって歌ってくださいね」って投げた方がタメになると思いますね。

――ちょっとこういう言い方すると失礼かもしれないですけど、まだ完成されてない、と。

パセリちゃん:まだ全然、まだまだ。ここからじゃないですかね。歌は。

未來:初めて会った時に歌い方を直されました。

パセリちゃん:めちゃくちゃ上手く歌おうとしてたので。

未來:そう。上手く歌おうとずっとして。

パセリちゃん:それは絶対良くないんで。

――なるほど。でも未來さんとしてはどうですか? 「上手くなりたい」と思ってるんじゃないですか?

未來:「上手くなりたい」とは思っていたので、普通に裏声とか使いまくってたんですけど…。

パセリちゃん:そんなのいらないって。

未來:(地声でも)「出るよ」って言われて、「その声を活かしな」って言われて。そしたらライブも褒めてもらえることが増えて。だから良かったかなって。

――そういえば裏声使ってないですよね。

パセリちゃん:使ってない。禁止です。雨宮のみ禁止です、ウチは。

未來:ビブラートも禁止。

パセリちゃん:裏声、ビブラート禁止なんで。

未來:出来ないけど(笑)。

――音源でもライブでも、ある意味、勢いよくがなってる感じですよね。裏声で逃げないでね。

パセリちゃん:そうです。「まっすぐ歌ってください」っていうのが一番。

――では逆に、未來さんから見た“ヴォーカリストのパセリさん”ってどうですか?

未來:いや、評価は高いです。

パセリちゃん:アハハ(笑)。

未來:とても高い(笑)。デモをもらう時は、まずは母と聴くんですよ。そしたら母は「この人が自分で出した方がいいんじゃない?」「そのくらいの人だよね」みたいな話をしてて、結構高めの評価です(笑)。

パセリちゃん:ありがとうございます。

未來:はい。お客さんからも「いいね」って声をよく聞くので、歌詞割りもうちょっと増やしても良いんじゃないかなって…。

パセリちゃん:いやいやいや。いいよ、いい。

――僕はバランスは今ぐらいが良いかなと思うんですけど、でも、僕が初めてライブを拝見した時に「パセリさん、良い声されてるな」とご本人にお伝えしましたし、「パセリさんの歌があるからこそ未來さんの声も生きる」って思ってます。

未來:そうですよね。

パセリちゃん:ありがとうございます。

――お二人の声がよく似てるとも言われますよね?

未來:そう。言われます。

パセリちゃん:それは多分僕の仮歌を聴いてるからじゃないですかね。

未來:そうかもしれない。

パセリちゃん:めちゃくちゃ似てきてますね。いいと思いますよ。ありがたい。

――声質も似てませんか?

パセリちゃん:声質も似てます。基本的に声質は近いです。ただ、どうしても性別の違いで、上下することはあるんですけど、そこは編集で寄せてます。イジってるんじゃなくて、ミックス的にちゃんと聴こえるようにイコライザー掛けたりとかはしてます。

――なるほど。例えば「人間やるのやめた」とか、ライブではどんなことを考えながら歌ってるんですか?

未來:ライブ前に嫌なこと思い出すんですよ。

――それはどんな嫌なことなんですか?

未來:結構もう「ハーッ」てなっちゃうぐらいの、泣いちゃいそうなぐらいことを無理やり思い出して、一回気持ちを沈めるんですよ。でも、沈めすぎるとライブに影響しちゃうので、あまり沈めすぎず、“楽しい”も出せるくらいに、自分を冷静に落とすんです。

――何か難しそうですね。

未來:だからそう、沈めすぎちゃった時は結構話しかけてもらって。

パセリちゃん:そうなの? 調整してるの?

未來:そう。話聞いたりして調整してるんです。ライブ前に。

パセリちゃん:いつもそうかなと思って、話し掛けたら「うるさい」って言われる時ある(笑)。

未來:そう。ナーバスなんです。

パセリちゃん:「知らねえわ」と思うんだけど(笑)。

未來:ちょっと沈め過ぎちゃった時とかは、静かにして欲しい時とかあります。

――気持ちの上げ下げをコントロール出来るわけですか?

未來:はい。でもライブ前しかやらないです。ライブでしか“元気じゃない”自分を出せないので。ライブはそういった部分も含めて全部出せるところなので。だからちょっとセクシーなとことか出したりもしてます。

パセリちゃん:ごめん。それ出てねえわ。

未來:セクシーな感じ、表情とか。

――僕もこの間は観れなかったです…。

パセリちゃん:僕も一応100本以上ライブやってますけど、見たことないっすね。

未來:悲しい部分とか、ちょっと大人っぽい感じとか出したり、結構やってます。

――未來さんなりの“セクシー”は出してる、と。

未來:はい。

――ある意味、「セクシー」も含めて全部を晒け出してるわけですね。

未來:そうですね。これは身を削ってやってる感じです。

――演技とか興味あったりしますか?

未來:最初は女優さんになりたくてこの世界を目指してたんですよ。でも難しいじゃないですか。事務所に入っても事務所内でのオーディションに受からなかったら、本オーディションに行けなかったりして…。アイドルも好きだったので、名前を知ってもらうためにこのライブアイドルっていうのを始めたんですよ。でもNaNoMoRaLを始めたら、結構表現することが出来ちゃってるので、女優さんになりたいって気持ちがだんだんなくなってきてて…。

パセリちゃん:ああそうなんだ。

ちょっと鋭利なものっていうか、そういう感じをもっと出していければなと思ってます(パセリちゃん)

――「もんすた」とかは、曲調が明るくてレイドバックしている雰囲気があるじゃないですか。「もんすた」って、自分の中の「モンスター」みたいな意味合いなんですか?

パセリちゃん:これは人に対してですかね。

――あぁ。

パセリちゃん:腹立つ人いっぱいいるんで、そういう人に対してですね。

――なるほど。そういうモンスターがいっぱい。例えばSNS上にもいたりとか。

パセリちゃん:そう。ただ「それはそれで良いんじゃないの?」っていうような感じで締めてはいるんですけどね。

――曲調と詞の内容に少しギャップがありますよね。その辺の表現は難しくないですか?

未來:そうですね。この曲を歌っていると、ついニコニコしちゃうんですよ。あと最初すごい静かに始まるので毎回緊張するんです。

パセリちゃん:緊張してるよね。

未來:そう。それまでめちゃくちゃ盛り上がってても、あのイントロで一回リセットされるんです。この曲は最初ホントに緊張します。でも最後の方に盛り上がってくるんですよ。

――なるほど。この曲でも「それでもいいんじゃない?」って形で多様性を受け入れるわけですけが、それは、ちょっとした批判がありつつも良いんじゃないか、という感じですよね。

パセリちゃん:そうですね。皮肉も入ってます。

――それをこういう曲調でニコニコしながらやると、逆に怖いですよね。むしろその“酷さ”が伝わるかもしれないですよね。

パセリちゃん:すごくいいと思います。これをニコニコしながらやるのは。

未來:ホントですか?

パセリちゃん:ピエロ的な感じで。

――ですよね。シリアスにやっちゃうと、むしろあまり想像が広がらないかもしれません。

パセリちゃん:曲もちょっと跳ねるような感じで、かといって速いわけでもなくすごいゆったりしていて…。

――そんなふうに曲調が明るくて、でも詞は非常に辛辣な部分があったり……結構解釈や表現が難しい部分もあるように思えるんですが、詞を読み込んだりとか、そういうのはされますか?

未來:詞は結構意味とか調べたりとかしますね。あと、「これはどういう感情ですか?」とか聞いたりします。

パセリちゃん:うん。そういうの聞いてきますね。

――そういう“会議”みたいなものをやってるわけですね。

未來:はい。

パセリちゃん:すごい聞いてきますね。

未來:「好きなように歌っていいよ」って言われるんですけど、それが逆に不安になっちゃうので。

パセリちゃん:だから表面だけパッと伝えて、そこからの解釈は任せます。

――事細かに説明するわけではないんですね。

パセリちゃん:それはしないです。曲の概要っていうか、「結局こういうことが言いたいんだ」っていうのは伝えます。

――じゃあ、そこから先は自分で解釈をして、と。

パセリちゃん:でも、わからなくてもいいと思うんですよね。よくわかんなくて歌ってても、気持ちで伝われば全然いいかなと。難しい言葉を使ってても、本人はわからないで言ってるっていう面白味もあるし。それもリアルだと思うんで…。全部わかっててもしょうがないのかなとは思います。

――では最後に。今後「どんな曲をやっていこう」とか「どんな方向性にしよう」とか考えてることはありますか?

パセリちゃん:そうですね。もうちょっと尖った切り口でやれれば良いかなとは思います。

――さらに尖るわけですね。

パセリちゃん:そうですね。僕も今すごい楽しいんで、ハッピーに行きがちなんですけど、そうならないようにっていう戒めもあり…。そういう意味でも、ちょっと鋭利なものっていうか、そういう感じをもっと出していければなと思ってます。

――でも、先ほどお二人もおっしゃってましたが、ある意味「ハッピーな」境遇にあると…。そんな中でどういう風に“尖って”いくんですか?

パセリちゃん:でも、今いる位置には不満はあるので。不満っていうか、何だろう…。「もっと出来るだろう」っていうのはあるので、そういう意味はまだまだハッピーじゃないです。“悔しさ”っていうのは絶対あるし。

――それはポジティブな“不満”というか、“意欲”という感じですね。

パセリちゃん:そうですね。あと、出来るだけ長くやりたいと思っています。でも。長くやるには認められてないといけないですし、僕は昔バンドやってたんですけど、その界隈には認められずにやってる人もたくさんいるんですよ。評価されないで…。

――僕もたくさん見てきました。

パセリちゃん:認められないとしょうがないと思ってるので…。長く続けるっていうのは、ずっと認められてるっていうことですからね。今以上にいろんな人に見てもらいたいし、2019年は大きなフェスに出たいよな?

未來:いっぱいオーディションにエントリーしたんですけど、全滅でしたもんね。2018年は…。

パセリちゃん:そんな簡単じゃないのはわかってるんですけどね。

未來:それに何か引っ掛かるようになれたらいいなと思いました。ホントは全部受かりたいんですけど、一応きっかけを掴もうとしてるので、それが伝わったら良いなと。

――「ロッキン」や「フジロック」に出たいとおっしゃってますよね。

未來:はい。出たいです。

パセリちゃん:全部落ちましたから。でもまだホントにクオリティっていうことで抜け出してないんだな、と。なので、もっと良くなると思うんですよね。音楽的にも、ライブの見せ方的にも、まだまだ伸びると思うので、その伸びた状態で、そうしたエントリーが春頃から始まるので、来年の夏に向けてちょっと“引く”ぐらい良いものを作りたい…。直近の目標としてそれですかね。

――でも、その「長くやる」っていうのと「大きくなる」っていうのは、また少しベクトルが違うと思います。「大きくなる」ことよりも「長く続ける」ことを優先させますか?

パセリちゃん:あぁ…。まあでも大きい方がいいじゃないですか。

――例えば、最終的には東京ドームとかまで?

未來:やりたい!

パセリちゃん:やれるなら大きい方がいいと思います。その方が大変だけど、わざわざ小さくする必要はない、と。

――でもある考え方としては、今はもう“セルフ”で出来る。現に今お二人でやってらっしゃいます。必要以上にたくさんの人が絡んでがんじがらめになって、だんだん自分のやりたいようにできなくなる可能性もある。東京ドームでやるとかなったら、いろいろと制約があると思いますよ。

未來:え!? 嘘。めちゃくちゃ空飛びたいんですよ、私。

パセリちゃん:それはいいけど。

未來:それはいいんですか?

パセリちゃん:でも、いろんな大人の人が絡んで、人がいっぱい挟まってくると、絶対何かしら問題はあるから。

未來:私、ライブ前にめちゃくちゃ大人数で円陣組んで始めたいです。

パセリちゃん:もうそれぐらいなんで。それを言ってるぐらいが楽しいんでしょうね。

――まあ、ある種の憧れとしてそこに向かっていくのはいいんじゃないでしょうか。でも、それによって、いろんな壁にぶち当たると思います。まあ、その経験がまた曲になりますよ。

パセリちゃん:そうですよ。

未來:曲か…。

(取材・文:石川真男)

NaNoMoRaL ライブ情報

NaNoMoRaL presents
『 siranai party vol.01 』

■日程:2019年01月13日(日)
■時間:OPEN17:30 / START18:00(予定)
■会場:渋谷DESEO mini with VILLAGE VANGUARD
※東京都渋谷区道玄坂2-13-5 ハーベストビルディング2F
■料金:前売り 2500円 / 当日 3000円 ※別途1D
■出演:NaNoMoRaL / ジョニー大蔵大臣(水中、それは苦しい) / MELLOW GREEN WONDER / SAKA-SAMA / 電影と少年CQ

NaNoMoRaL 商品情報

ミニアルバム『nisan ka tanso』発売中!

1800円(税込)

<収録曲>
呼吸のすすめ
ハジマル
人間やるのやめた
モノクロマジック
シンダフリズム
もんすた
サーチライト

NaNoMoRaL プロフィール

雨宮未來のソロユニットとして2018年03月09日にライブデビュー。

【Vox】
 雨宮未來
 birth 07/12
 twitter @amamiya_miku

【Manipulator & Producer】
 梶原パセリちゃん
 birth 01/08
 twitter @K_PaseliChan


公式サイトhttps://www.nanomoral.com/

公式ツィッター@NaNoMoRaL_info


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