フィロソフィーのダンス|最高に生きてる感があって、踊ってる私たちも「人間って最高!」みたいな人間賛歌的なものを感じて

フィロソフィーのダンス|最高に生きてる感があって、踊ってる私たちも「人間って最高!」みたいな人間賛歌的なものを感じて

「FUNKY BUT CHIC」を旗印に、哲学的思考を背景とした詞を、本格的なダンス・ミュージックに乗せて歌い踊るフィロソフィーのダンス(通称:フィロのス)。ウルフルズやナンバーガール、相対性理論などを手掛けてきた加茂啓太郎がプロデュースするこの”アイドル”グループは、“楽曲派アイドル”の理想形と言えるかもしれない。

まずは“楽曲”という側面から見ると、洋楽などにどっぷり浸かった耳の肥えたリスナーにも突き刺さるような、本格的なサウンドを展開。シックやEW&F、ジェームス・ブラウン、カーティス・メイフィールドといった偉大な先達にオマージュしたファンクチューンを基調に、時にエレポップやAOR、スタジアム・ロックやエスニックチルアウトまで多岐に亘るサウンドで音楽好きを唸らせるのだ。また、加茂プロデューサー曰く「ポップ・ミュージック・ヒストリーのアーカイブの発掘と再解釈」もテーマとして掲げているとのこと。それはすなわち、フィロのスがオマージュを捧げる音楽を知らない層にも、その普遍性を伝承する役割を果たしているということだ。

そして“アイドル”という側面から見れば、4人のメンバーの“四者四様”のルックスとキャラクターがなんといっても魅力的だ。また、“フォーマット“としてのアイドルの機能を存分に生かして、いわゆる特典会での“接触”やSNSなどでの言動で“神対応”をすることにより、ファンの心をぐっと掴む。そのことにより、“アイドル界隈“外から楽曲で引き寄せられてきた人たちに“アイドル”の素晴らしさを伝える役割をも担っていると言えよう。

楽曲によって引き寄せられた層がアイドルという“フォーマット”の中でさらに虜になっていく。一方、アイドルとしての魅力に惹かれた層が楽曲にその普遍的な素晴らしさを見出す。あたかも“フィロのス”という存在を媒介して、“楽曲”と“アイドル”の素晴らしさが各々伝播されていくかのようだ。

そんなフィロのスが、6月16日恵比寿リキッドルームにて、初のバンドセットワンマンライブを行った。“楽曲派アイドル”にとっては、バンドセットライブは一つの到達点ともいうべきもので、多くの“楽曲派アイドル”が既に挑んでいる。そんな中、フィロのスはまさに満を持してのバンドセット。この夜のライブは、フィロのス史上でも「過去最高となった」と言っても過言ではないだろう。洗練された和声やニュアンス豊かなグルーヴを完全再現するのみならず、そこに臨場感と躍動感を加える、手練手管のミュージシャンたちの優れた演奏に乗り、フィロのスの4人は思う存分歌い踊った。驚きだったのは、この特別な編成による特別なライブで紡ぎ出されていたと感じたのが、決して特別なものではなく、他ならぬ“フィロのスらしい魅力”だったということだ。

それは、彼女たち特有の“肯定性”というか…。いわば“懐古的なダンスミュージック”を鳴らしているがゆえに、ともすれば享楽的、刹那的、あるいは幻影的になりがちだが(もちろん、そうした表現をサウンドの妙とする優れたグループは存在するが)、彼女たちの場合は、幸福感や現実感、あるいは生命感に満ち溢れているのだ。

そうした“肯定性”の秘密を探るべく、十束おとは、日向ハル、奥津マリリ、佐藤まりあの4人にインタビューを敢行。バンドセットライブを終えた数日後に、ライブについて、グループの根源的な魅力についてなど伺った。あの幸福感・生命感の源は“富士そば”???

「早くアリーナツアーをやりたいので、売れてください」って言われたので、もう何がなんでも売れたいなと思いました(日向ハル)

――恵比寿リキッドルームでのバンドワンマンを終えて、今、率直にどうですか?

佐藤まりあ(以下:佐藤):私たちまだまだ成長できるなって思えたというか…。「すごく良かったよ」と言ってくださるファンの方が本当に多かったし、自分たちも今までにないぐらい一生懸命準備して来たので、“成功”と言っていいかは分からないですけど、しっかりと形に残すことができて良かったと思います。夏フェスもいっぱい決まってるし、これからまだまだフィロソフィーのダンスを知ってもらえると思いますし、「未来に少し希望が見えた」みたいなワンマンだったなと思っていて、「この先も頑張ろう」って気持ちで、今いっぱいです。

――あくまでまだ通過点というわけですね。

佐藤:はい。ワンマンも「ここは通過点だから」ってスタッフさんにも言われてたんですけど、もうまさにいい感じに通過できたので、また次の目標を決めて、そこもしっかり通過して行きたいなと思っています。

――なるほど。奥津さん、お願いします。

奥津マリリ(以下:奥津):私は、当日のMCでも言ってたんですけど、“夢が叶った感”がすごい強くて。とにかくすごい幸せで。でも「ここで燃え尽きちゃダメだ」というのはメンバーもスタッフさんもみんなで言ってて、それに、私たちもそうですけど、「ああ、良かった」みたいな感じでファンの方も燃え尽きてしまわないか、って思ってて…。なので、今は「これからを見せなきゃいけない」という思いが強いです。夢が叶って、また次、また次、って思ってもらえるようになりたいな、って。ワンマン翌日にもライブがあったんですけど、ファンの方も「あのフィロソフィーのダンスだから、もっといいものを見せてくれる」みたいな期待感を抱いていただいていたみたいで、翌日のライブでもその熱を持ったまま、階段を下がらずにしっかり上がれたので、これからもまだまだ上がって行きたいな、という思いです。

――ハルさんはいかがですか?

日向ハル(以下:日向):リハーサルから本番までの約半月だったんですけど、自分が今までやってきた中で、一番刺激を受けて、一番自分が成長したなと思える時間でした。まずプロの力に感動したというか…。初めてリハーサルを見学した時に、メンバー全員感動して泣いちゃうぐらいすごい演奏で…。「こんな素晴らしい演奏なんだから、お客さんにこれをさらにいい形で伝えるのは、もう私たち4人に掛かっているな」と思って必死に練習したんですよ。こんな豪華な方々と今までやる機会がなかったので、やっぱりそういうのを目の当たりにして、自分に対して思うこともありましたし、「やっぱプロってすごいな」って改めて思いましたし。ライブが終わってからも、そのバンドメンバーの方々と打ち上げとかでたくさん話して、「なんで音楽を始めたんですか?」とか、「どういうモチベーションで頑張って来たんですか?」とかいろいろ聞かせていただいて…。

――お聞きになったんですね?

日向:聞きました。そんなに簡単に会える方々ではないので、貴重な経験になったと思いますし、終わってからもメンバーの方に「今までバンドでライブをやることに慣れ過ぎてて、今回ハルちゃんたちが僕らの演奏に合わせて本当に楽しそうに幸せそうに歌って踊っているのを見て、心が洗われました。バンドって素晴らしいなって改めて思いました。ありがとう!」って言われて…。こっちはもう素晴らしい演奏をバックにただただ楽しかっただけなのに、そう言っていただけたことがすごく嬉しくて。「早くアリーナツアーをやりたいので、売れてください」って言われたので、もう何がなんでも売れたいなと思いました。

――十束さんはいかがですか?

十束おとは(以下:十束):まずは「終わってすっきりした」っていうのが本音で…。すごいプレッシャーというか、自分が気付いていないものまで抱え込んでいたみたいで、終わった瞬間もう10キロぐらいの重みが取れたと思うぐらい、めちゃめちゃ体がすっきりしました。私、基本的には毎朝6時に起きるんですけど、あの日終わって夜寝てから翌日のお昼12時ぐらいまで目が覚めなくて…。それぐらい自分の体が疲れてた、そこまで頑張ってた、っていうのを改めて知ったんですよね。今まで生きてきてそこまで何かに打ち込んだことってなかったので、「本気になって1つの物事に取り組むことができて、一応成功という形で終われたのは良かったな」って思いました。バンドメンバーの方もすごい豪華な方々で、しかもそれがクラウドファンディングという皆さんの出資で実現したというのが、私はアイドルとしての理想の形じゃないかなと思っていて…。自分たちではまだ呼べる力はないですけど、こうやって応援してくれてる方々の力があって、あのバンドと共にリキッドルームに立てたということが、私の中ではすごい大切な一歩だったなと思っていますね。改めてアイドルとファンの在り方を感じて、「やっぱりアイドルっていいな」って思いました。

――で、当日なんですが、もう始まる前からフロアになんかすごい熱気というか高揚感があったんですよね。そういうのって、例えば舞台袖にいた時とか感じたりしました?

十束:私、影ナレをしたので、みんなより一足先に舞台袖に行ったんですが、熱気がめちゃめちゃすごくて、「なんだこの空気?」って思いながら影ナレしてたんですけど、流れているBGMでもうみんなでノリノリな感じになってて、「えー!すごーい!」と思って!(笑)

――そうなんですよ。

日向:クラブ状態だったんだね。

十束:影ナレでも、言葉を発したら、もう「ワー!」みたいな。「こんなに人いるんだ」って、その声で改めて圧倒されて、それでライブやるのがさらに楽しみになりました。

――なんかちょっともう異様って言っていいぐらいでしたよね。僕はワンマンを見させていただく度に、「ブレイクするアーティストの空気みたいなのを感じる」って毎回ツイートしてるんですけど…(笑)

一同:ありがとうございます!

――今回は本当にそれまでで一番感じました。異様なぐらいでした。

十束:不思議だった…。不思議でしたよね?

――不思議でした。

佐藤:体験したかった。

奥津:ステージに降り立った時、一番最初に聞こえた歓声が、なんかテレビでよく使われるような「ワー!」みたいな大歓声だったんですよ。たくさん人がいて遠くの方からも聞こえてくるみたいな音ってあるじゃないですか。素材というか…。本当にたくさんの人がいるというのを感じて、なんか他人事みたいに「テレビのあれみたい」と思ったんですよね(笑)。実感がないというか…。今まで感じたことない空気でした。

――ある意味すご過ぎて、現実感がなかったという感じなんですかね?

奥津:そうそう。

――確かに。いや、それこそ加茂さんが選曲された開演前のBGMでね。

加茂プロデューサー(以下:加茂):あそこでうまくつながりましたね。偶然。

――ですよね。え、でも偶然なんですか?狙ってらしたんじゃなくて?

加茂:狙ってなかったです。

――ちょっと押したんですよね。で、開演時間が過ぎたぐらいでChicの「Le Freak」が流れて、もう皆さんもあの曲で「いよいよ始まるな」っていうをなんとなく感じていて、あそこでまた一段と「これはなんかすごいことが始まる」みたいな空気が膨らんだんですよね

佐藤:えぇ~!フロアにいたかった…。

初めて“グルーヴ”を実感したというか、音がない所での空気みたいなのを感じられて…(十束おとは)

――先ほど「バンドで夢が叶った」とおっしゃったましたが、やはりオケでのライブとは全然違いますか?

日向:違いますね。ひとつひとつの楽器の音がちゃんと聞こえるので、リズムやグルーヴが生まれやすいですし、それによって歌も歌いやすいし、ダンスも踊りやすいし、それが相俟っていいライブになったと思ってます。

――ハルさんは以前バンドをやられてたわけじゃないですか。なんというか“ホーム”に帰ったと言うか、そんな感覚はありましたか?

日向:う~ん…。特にホームに帰ったという感覚はなかったですけど…。レベルがめちゃめちゃ高い方たちなので、オケとの差をものすごく感じましたね。いい意味で。

――他の方はどうですか? もしかしたら、十束さんと佐藤さんのお二人は、いわゆるフルバンドで歌ったのは初めてですか?

十束:初めてです。

佐藤:初めてですね。オケとは音が違うのはもちろんですけど、後ろで見守ってくれている感じがなんか心強くて。ライブ中、オケとはアイコンタクト取れないんですけど(笑)、演奏してくださる方とはしっかり目を合わせて、「いい感じじゃん!」みたいな表情で視線をいただけるので、ライブやってて気持ちが上がりますね。後ろで素晴らしい方たちが支えてくれてるので、私も最強になった気持ちで、思いっ切り強気でいけました。

――スーパーミラクルだったわけですね?

佐藤:はい。スーパーミラクル炸裂しちゃいました(笑)。

――十束さんは?

十束:バンドの音があることによって、最高に生きてる感があって、踊ってる私たちも「人間って最高!」みたいな人間賛歌的なものを感じて、「それがバンドでやる意味なのかな」って思いましたね。私たちは前向きな、ポジティブな力が強いなって、私自身は思ってるんですけど…

――僕も思います。

十束:思いますよね!

――めっちゃ思いました。

十束:イエーイ!

――いや、本当に。

十束:それがバンドの方々の力を借りて、もうさらにめちゃめちゃ「生きるって最高!」みたいな感じのパワーが後ろのほうのお客さんまで届いたような気がして…。それは初めての経験だったので、すごい良かったなって思いました。

――“富士そば”とどっちが生きてる感じがしますか?(笑)(編注:十束おとはは取材の前日「帰りに富士そば駆け込んでサラリーマン戦士達に混じって食べるムーブ、好きすぎる。生きてる感があるね」とツイート)

十束:えぇえ?!どっちも(笑)。どっちも違った意味で。

――同じぐらいですか?(笑)

十束:富士そばもだいぶ強いんで(笑)。

――(笑)奥津さんいかがですか?

奥津:以下同文なんですけど(笑)。でも本当に、メンバー以外の人がステージに立っているということが、より良い形で表せたなって思いました。なんかそこに違和感があったり、“バックバンドと私たち”って乖離があっても寂しいじゃないですか。それがいい感じに相俟って、みんなの気持ちがひとつになって、いいステージができたなと思いましたね。

――先ほどアイコンタクトの話が出ましたが、ステージ上では、やはりバンドとの有機的なコミュニケーションがあると思うんですよね。何か具体的にそういったものはありました? 例えばアイコンタクトをしながら“出方”を変えるとか。いわば、普段の皆さんは、しっかり振り付けがあって、基本的にはメロディー通りに歌うじゃないですか。もちろんそうじゃない部分もありますけど…。なんかそういった即興的な部分とか、コミュニケーションで生まれた部分とか、ってありました?

奥津:あ、これ長くなっちゃうんですけど。一人一人にすごくあって、ドラムの城戸(紘志)さんとはリハーサルの時に「どこで合わせられるかな?」とか「ここいけるね」みたいな話をしてて、本番でもそこビシッて目を合わせたりとか。あと、本当にラストの“かき回し”の所で、リハーサル中に「俺がもっと行くからもっと来い!」って言ってくださって。「でも本番はもっともっと行っていいから、どんなに長くなっても叩くから」って言ってくださって、もう最後、私もあんなに叫んだの初めてって言うぐらい叫んで、ホントに出し切りました。あと面白かったのは、キーボードの福田(裕彦)さんが「ここでアイコンタクト取れるよ」「この曲余裕あるから結構見れると思う」って言ったのに、1回も目が合わなくて(笑)。

――アハハ(笑)。

奥津:まあ、他のところで目が合ったんですけど。「俺もうすごいパッションが出過ぎて、なんかもう本当に楽しくなり過ぎて、なんにも見ないで無我夢中で弾いちゃった」みたいなことを言ってて(笑)。でもその様子も分かるんですよ。すごい乗ってると思って見てました(笑)。目が合わなくても、すごい楽しんでいる感じが伝わってきて、「やってる、やってる」みたいな(笑)。それがすごく楽しかったですね。そして宮野(弦士)さん。アンコールの「ジャスト・メモリーズ」が始まる前、「ひと息ついて幕を開けます」という時に、「やって!頑張って!」みたいな目をしてて…

――言葉はなくて目で物を言ったわけですね。

奥津:そう。こんな感じで遠くから…。「あっ」って思って私も見たら、すごいうなずいてくれたので、「よし」と思って。そのアイコンタクトがあったから「ジャスト・メモリーズ」で落ち着くことができて、気持ちを込めて歌うことができました。他もいっぱいあります。他のメンバーさんともたくさんエピソードが…。

――他もいっぱいあるんですね。ハルさんは「ラブ・バリエーション」でギターと掛け合いをやられましたよね。あれなんて結構入念に打ち合わせしたんですか?それとも、即興的に?

日向:リハーサルで何回かやって、ある程度パターンとか音域とかの相談はして、それに合わせて弾いてくださったんですけど、最後はもうお互いが競い合うかのようになって、「負けないようにフェイクを入れて来い」って感じで…。リハでは上手くできなかったんですけど、本番になってみると、なんか死んでも声が出てしまうと言うか(笑)。とりあえず声を出したら高揚感がすごくて、一番良い感じで歌えました。
 

――本番に強いタイプですよね。

日向:(笑)ですね。

――でも、楽しかったでしょう?

日向:めちゃめちゃ楽しかったですし、ああいうふうに見せ場を作ってもらえたことも、自分のやる気につながりましたし、ああいう掛け合いがあったことでギターの方と話すきっかけにもなりましたし、一つ一つがうれしかったです。

――音楽の楽しさっていうのはそういったところにあるのかな、なんて思います。

一同:はい。

――僕、ジャズが大好きなんですよ。即興演奏が大好きで。最近アイドルさんの取材とか多くて、決して否定しているわけではなく、むしろそれが面白いとさえ思っているんですが、まあ言えば、サウンドは打ち込みが多くて、固定された振り付けをして、いろいろと決められている部分も多くて…。相手の出方を見て。じゃあこちらはこう出る、みたいな音楽ではないと思うんですよね。最近ちょっとまたそういう音楽を欲していて、結構ジャズを聴いているんですが、音以外の所に、例えは演奏者と演奏者の間などに“空気”があるんだな、というのを以前にも増して感じていたところなんです。で、皆さんのライブでも、それをすごい感じたんですよね。皆さんはそういうのを感じられました?

十束:そうですね。頭では分かっていたものを、自分の体を使って表現するのは初めてでした。確かにその、音のない所に空気があるっていうのは、頭ではなんとなく分かるじゃないですか。だけどそれを自分の身体で歌って踊って表現する、みたいなのはオケではあまり理解ができなかったんですけど、バンドと一緒にやることによって、「あ、こういうことだったんだ」って思えました。初めて“グルーヴ”を実感したというか、音がない所での空気みたいなのを感じられて…。音楽偏差値7ぐらい上がりました!(笑)

――アハハ(笑)。

十束:ちょっと頭良くなった気分になりました。ちょっと理解した!

CD音源で聞いてる音が、なんか“実写化された”みたいな感じがして…(佐藤まりあ)

――音響面でも非常にクリアだったのが印象的でした。皆さんの音楽では、ギターのカッティングって命じゃないですか。二人のギタリストのカッティングがどちらも綺麗に聴こえて良かったです。

加茂:そうでしたね。

――そんな音の良さみたいなのも感じました?

佐藤:感じました。CD音源で聞いてる音が、なんか“実写化された”みたいな感じがして…。初めてバンドメンバーさんの演奏聞いた時もそうなんですけど、なんか「今まで何かで見てたけど出会えてなかった誰かに出会った」みたいな気持ちになって。

――おぉ~。

佐藤:例えばディズニーランドに行って、初めてミッキーを見た感覚じゃないですけど、「すききらいアンチノミー」のイントロのカッティングのところとか、あれの“実写版”を見たみたいな感じがしました。

日向:本当にあったんだ!って。

――なるほどね…。

佐藤:本当にここに存在したんだ、って。「エポケーチャンス」のサビ前の「ティロティロティロ」ってギターの音、私めっちゃ好きなんですけど、それが実写化されて自分の耳に入って来て、「本物だ!本物を聞くのって気持ちがいいな」っていうか。気分も乗ってくるし。そんな感じでした(笑)。

――ですよね。まあ、電気で音が増幅されて出力されるという意味では、バンドもオケも同じっちゃ同じなんですけど、でも、例えばドラムスなどは、本物の太鼓の皮が振動したものが、ダイレクトに皆さんにも、お客さんにも響いてるわけですよね。そういう意味でも「実写化された」っていうのは非常に的を射た表現ですね。

佐藤:不思議ですよね。なんか人間の手で鳴らされた音が…。

――色も形もないのに。

佐藤:それがそのまま直接耳に入って、一つの音楽になって、ダンスとも相俟って…。最高だったんじゃないかなと思います。

――何か付け加えることはありますか?

奥津:バンドの一つ一つの音が聴こえることで、「ここ、こうやって歌えば良かったんだ」みたいなことが分かったりして…。リズム的なこととか…。「音が取りやすい」とか、「ここのベースの音がガイドだったんだな」とか。生で聴いたからこそ分かることによって、音楽的な向上心がさらに湧いてきて、今まで聴けてなかった音が聴けるようになったというか。音源だと聴き逃してた部分が「俺もいるよ」みたいな感じで目の前に現れたので、これからはそうした一つ一つをもっとちゃんと聴いていこうと思いました。

――おぉ、素晴らしい! ハルさんは?

日向:一番印象的だったのが、パーカッションのスミちゃん(早藤寿美子)。前回のワンマンでもご一緒させていただいたんですけど、もう前回の時点で全部の曲を覚えていただいてたんですよ。どの曲をやるか言われてない状態でのオファーだったので…。私たちの持ち曲全部BPMとか解析して、自分が叩くならこのパターン、って1冊のノートにまとめて持って来てくださったんですね。

――へぇ~!

日向:なので、今回も全部譜面見ないで叩いてて。やっぱりそういう熱量を感じることによって私たちも刺激を受けますし、「アイドル・フィロソフィー」の最後の「ドゥンドゥン、ドゥンドゥン」の所で、めっちゃ大きい太鼓を持ち上げて叩いて。私たちはその時は後ろを向いているので、お客さんが太鼓にしか目が行かないというか(笑)。でも、曲をめちゃめちゃ聴き込んで、大事な所でその楽器を使って、という風に考えてくださったことに、ものすごく愛を感じて嬉しかったです。

――あそこであれをやるっていうのは、もうピッタリですよね。「アイドル・フィロソフィー」にはトライバル感というか民族感みたいなのがあるんで、まさにあの“演出”はぴったりでした。では、偏差値の上がった十束さん、どうですか?

十束:まず、私たちの曲の楽譜があることに…まあ、バンドの方が演奏するので当たり前なんですけど、それが、全部こうやって紙になっていることに、「あ、すごい」って思いました。私たちの曲の譜面って見たことなかったんですよ。なので、それ自体「すごいな」と思ったし、それが最終的に決まったものではなくて…。「もっとここはこうしたらいいと思う」といったことをドラムの城戸さんと宮野さんがすごい話し合ってて、それをリハの時に見て「すごい!これがプロだな」って思って…。書いてあるものだけじゃなくて、「もっとここをこうしたら良くなるよ」みたいなのを言い合っていて。お二人はいつも一緒にやってるわけじゃないじゃないですか。この1回だけなのに、その1回にめちゃめちゃ全力を注いでくださっていて。「これはもう私たちも頑張るしかない」みたいな空気がリハの時からありましたね。それがバンドの皆さん全員から溢れていたので、「私たちも頑張んないといけないな」って。

「バンドに飲み込まれてないアイドルって珍しいんだよ」って言われたのがものすごくうれしかったんですよね(日向ハル)

――皆さんはワンマアイブの1曲目に新曲をやることが少なくないと思うんですけど、今回もそうだったじゃないですか。「イッツ・マイ・ターン」という新曲を。

奥津:そうだったんです~。

――お客さんの前で初めて披露するのが、バンドセットで!

日向:そうなんですよね。あの曲をやるって決まったのが本番の半月前ぐらいで…。本当は新曲は1曲の予定だったんですけど、急遽2曲やることになったんですよ。それによって振り入れのスケジュールとかいろいろ増えて、メンバーもそのぶん負担もあったと思うんですけど、でもいいワンマンライブにするためにこの曲が必要だと思って、全員で「忙しくなるけど、頑張ろう」って言って毎日のように練習したので…。その中で言いたいこともどんどんメンバー間で言えるようになって、意見も出し合ったり、責任感も生まれたり…。その結果があのリキッドワンマンだったなと思ってます。

――そういう意味では、音楽的な部分もそうですけど、グループの結束であったりとか、もっと言えば人間的にも成長したのかもしれないですよね?

日向:もっ~と言えば、人間的にもそう!(笑)

――(笑)。で、僕がすごい感じたことがあるんですが…。バンドセットでやる場合って、すごい豪華な臨場感溢れるサウンドになって、まあ言えば、普段のオケと変わってしまって、ある意味それは“豪華版”“実写版”なんですけど、時に演者がバンドに飲み込まれちゃったりとか、良くも悪くも普段とは違うものになったりとか、ってこともあると思うんですよね。でも、あの夜すごい感じたのが、紛れもなく「フィロソフィーのダンスだな~」って。そう思ったんですよ……はい。で、どうしてそう思ったでしょうか???(笑)

一同:(爆笑)

日向:まさかの!(笑)

十束:クイズ形式!(笑)

奥津、佐藤:(笑)。

十束:ピンポーン!

――はい!十束さん、どうぞ(笑)。

十束:バンドの方が、私たちのことをすごく理解してくださったのもあるし、私たち4人がみんなすごく追い込まれていて、すごく頑張ったんですよ。4人それぞれにすごく頑張って、みんなの気持ちがめちゃめちゃひとつになっていた時期だな、って自分でも感じていたので、「いいものにしよう」という4人の気持ちがぴったり合致して当日を迎えたので、その4人の放つパワーみたいなものが今までにないぐらい大きくなって…。なので、結果的に“フィロソフィーのダンス”っていうものがドーンって客席に放り投げられたんだと思います。

日向:正解は?

――ブーー!(笑)

一同:えぇええええ!(笑)

日向:まさかの(笑)。

奥津:おもしろいなぁ(笑)。答え知りたい!

佐藤:答え知りたい!

十束:間違えたぁ。正解が知りたい!

奥津:ヒントヒント!

――いやいや、違います違います。正解はないんですよ、正解は(笑)。

十束:アハハハ(笑)。

――それはもう、それぞれが思うとおりで(笑)。

十束:なんなんだ!(笑)

――いや、僕も分かんないっちゃ分かんないんです。もうそう感じただけですから。

十束:おぉ。

――ただ、その感じたのは、やっぱり先程十束さんもおっしゃったような“肯定性”なんですよ。

十束:うんうん。

――なんか、みなさんの音楽って、いにしえのサウンドを再解釈する部分があって、まあ言えば、昔のファンクをやっているわけで。そういう場合って、どこか幻影性みたいなものとか、あと昔のディスコとかの享楽的な感覚とか、儚さみたいなものを打ち出しているグループもあったりして、割とそんな表現になりがちな印象なんですよ。もちろん、それで素晴らしいサウンドを構築しているグループもあって、そういうのも僕は大好きなんですけど…。でも、皆さんの場合、なんか肯定的で、ハッピーで、現実感があって、生命感があって…。それが思い切り出てたのを感じたんですよね。それはもちろん、バンドさんがそういったものを肌で感じて、完璧に再現して、さらには臨場感を加えていたから、というのもあると思うんですけど、でも、そこから生まれてきたのは、いつもの「フィロソフィーのダンスの魅力」だと感じたんですよね。

一同:おぉ…。

――そういう意味でも、皆さん、パフォーマンスしやすかったんじゃないですか?

日向:そうですね。バンドセットでやるからには、絶対さっきおっしゃってたような形のライブはしたくないっていうのが自分の中にあって。

――飲み込まれちゃうみたいな。

日向:はい。今まで何回か周りのアイドルさんのバンドセットライブを見ていて、「こうなるんだ」というのを自分でシミュレーションしてたんです。その中で「自分はこうして行きたい」というのがある程度あったので…。例えばPAさんとかスタッフさんにそれを話してみたり、ライブ中にバンドメンバーと私たち4人が意思疎通できていたり、バンドさんが私たちのことを理解してくださってたり、っていうのもあったと思います。で、ライブ後の打ち上げでバンドの方に「バンドに飲み込まれてないアイドルって珍しいんだよ」って言われたのがものすごくうれしかったんですよね。制作の方ともお話ししたんですけど、「フィロソフィーのダンスは、バンドと同じ感覚でできると言うか、本当に音楽を楽しんでいる感じがするから、僕も楽しくこの仕事をやってる」って言われたり、周りの関わってくれた方々からうれしい言葉をライブ後にたくさん聞けたんですよ。そういうのもあって全員のパワーでいいライブになったのかなと思いました。

――正解です!(笑)

一同:おめでとう~!(笑)

日向:ありがとうございます(笑)。

――(笑)まあ、皆さん正解なんですけど…。そういう意味では、本当に「フィロソフィーのダンスだな」っていう感じがしたんですよね。あんなに豪華なバンドをバックにつけながらも、いい意味で普段と変わらないフィロソフィーのダンスだったな、と。みなさんの場合……例えば他のアイドルさんの場合って、結構いろんなギミックとかがあるじゃないですか。例えば試練が与えられて、「SNSのフォロワーを今月中に1万人にしないとうんぬん」みたいなのとか、「何人集めないと解散」みたいなのとか、そういったものをある種エンターテインメントとしてみんなで楽しんで行く、っていう“文化”がありますが、みなさんの場合も色んな“仕掛け”があると思うんですけど、どれも“音楽的”ですよね?

日向:そうですね。まあ、まっとうな仕掛け、って言うと他の方に失礼ですけど…。

――もちろん、そういったギミックをやられているアイドルさんを否定しているわけではなく、むしろそういうのを僕自身も楽しんでいるんですが…

日向:そうですよね。それはひとつの形だから、

――でも、どんな仕掛けも“音楽的”というのが皆さんの“色”であるのは確かだと思うんですよ。

日向:確かに私たちの場合は、ノルマを設けたりするよりも、「音楽的に最高のものを見せることによってステップアップして行く」という志向かなと思います。たぶん加茂さんも「いい音楽をやることが一番大事」という考え方があるから、その他のことじゃなくて音楽的に追及して行くってところに一番重きを置いてるんだと思うんですが…。加茂さん、どうですかっ?

加茂:その通りですね。そういう他のことをやるのも一つの工夫の仕方だと思いますけど、このグループの場合は、そういう時間とかエネルギーがあるんだったら、まずはいい曲といいライブができることに注ぐほうがいいだろう、という感じですね。

――“悲喜こもごも”や“危うさ”や“スリル”といったことをストーリーとして、ギミックとして付随させるのではなく、あくまで“音楽的”にそうしたものを打ち出すことが、先程言った「肯定的」「ハッピー」「現実感」「生命感」といったものに繋がっているのかな、と。それがバンドによって増幅されたので、より鮮やかに「フィロソフィーのダンス」というものが感じられたのかな、と思いました。

一同:うんうん。

前向きな姿勢を提示していくことが、ファンの人を一番安心させるんじゃないかと思うんですよ(佐藤まりあ)

――ライブ中に何か印象に残った出来事とかありますか? エピソード的なものとか。

佐藤:客席がすごい楽しそう、って思いました(笑)。めっちゃ楽しそうだし、感動して涙を流してくれている人もいるし…。私たちが本気でぶつかっていって、お客さんも本気でぶつかって来てくれて、なんかそこでも気持ちがヒートアップしましたね。後ろの方までバッチリ見えましたし。まあ、コンタクト入れてたからなんですけど(笑)。

一同:アハハ(笑)。

――(笑)いつも入れてないんですか?

佐藤:私、結構“緊張しい”なので、そんなに目は悪くなくて、「この人何々さん」って判断できるぐらいの視力ではあるんですけど、ソールドアウトしたパンパンな会場を後ろまでしっかり見たいなって思って。あとはドライアイなんで(笑)。

――泣いているのとかも見えたりするんですか?

佐藤:女性専用エリアの方がボロボロ泣いてたりして。

日向:あそこなんか涙すごかった。

奥津:みんな泣いてたね。

十束:泣いてくれてたね。

佐藤:人の喜怒哀楽と言うか、その表情をあんなに間近で見ることがないというか、お客さんとの絆も深まったなって思いました。特典会でも泣いてくれた人とか結構いて、私の前で。だから、私たちの活動を本気で応援して見守ってくれている人がいること、ライブでも特典会でも感じられて幸せだなと思いました。

――そんな泣かない佐藤さんが、泣いたんですよね? リハの時でしたよね?

佐藤:あのリハの時は本当に感動して泣いちゃって…。そして、ライブ終わりにも泣きました(笑)。

奥津:そう。今回はあんちゃん、めっちゃ泣いたんですよ。

佐藤:泣いちゃった。

奥津:「良かったー!」とか言いながら。

佐藤:泣かないって思ったんだけど…。

日向:「終わったー!」って。

奥津:楽屋に戻る道で。

――今までは泣くことなかったんですか?

奥津:なかったです。

日向:でも、おとちゃん以外はあんまり泣かないですよ。

十束:私は非常に涙もろいので(笑)。

奥津:なんかこうウルッと来たりとか、こらえることはあっても、そこまで泣いたことって本当にメンバーあんまりなくて。あんちゃんがあれほど感情をあらわに「良かったー!」って泣いているのを見て、私もすごい良かったなって思いました。

十束:ホント良かったんだなって思ったよね。

佐藤:本当に結構プレッシャーとか、自分の中でこう変わって行きたいみたいなのが今回強くて、なんかそれで終わった瞬間にスタッフさんとかも待ってくれてて…。それに、はすぴょんも泣いてるし(笑)。

十束:ごめんなさーい(笑)。

佐藤:なんか私もエモまって、「このグループで良かったな」って思っちゃって(笑)。

日向:えぇ~、本当に~?そんなこと思ってくれたの~?

――ハハハ(笑)

佐藤:(笑)やっぱそれで安心して、ちょっと気が緩んで泣いちゃいました(笑)。

――で、MCでもおっしゃってましたよね。「安心してください」「卒業、解散はありません」みたいなことを。

佐藤:そうですね(笑)。

――さっき言った肯定性とか明るさみたいなものとか…それらはそうした「安心感」にも起因するような気がするんですよ。まあ、知らないですよ、みなさんの内情は…。本当に仲いいのか知らないですけど(笑)。

十束:(笑) めっちゃ仲いいです。大丈夫です!

――でも、佐藤さんがあの日のMCでおっしゃったように、皆さんの場合、なんか脱退とか解散とか感じさせないんですよね。

佐藤:そうですね。前向きな姿勢を提示していくことが、ファンの人を一番安心させるんじゃないかと思うんですよ。あの時言った言葉は、若干家で考えてきた部分もありますけど(笑)、本心ですよ。本当にアイドルは脱退とか解散とか多くて、ファンの方は不安な気持ちになったりすると思うんですけど、「私たちについてくれば間違いないよ」ってことをライブのどこかで言いたくて。それでちょっと勢い余って大口たたきました(笑)。ライブのテンションで。最強モードだったんで、あの日(笑)。

――ハハハ(笑)。あの言葉にみなさんは賛同してるんですか?

一同:はい。

日向:そうですね。さっき言ってたように、解散がめちゃめちゃ多いですし、脱退やメンバーチェンジも…。それでも成立するのがアイドル文化だとは思うんですけど…。やむを得ない事情での解散とかもあると思っていて、そういうことがもし自分たちの中で起きたとしても、この4人の結束があれば、ある程度は乗り越えられるんじゃないかなと思っているので、この4人がまず同じ方向を向いていることが大事だと思ってますし、今回ワンマンに向けてそれがめちゃめちゃ固まったと思うので、とりあえず“しばらく”は大丈夫かなと思ってます(笑)。

――(笑)“しばらく”は! まあ、10年後とかは分かんないですもんね。

奥津:でも、あんちゃんがああ言った時、メンバーに確かめてるわけでもないのに、それを大きな声で大勢の人の前で言えるっていうのが、このグループの強いことだなと思っていて。私たちに「辞めないよね?」みたいな確認があったわけでもないですし。

佐藤:確かにそうだよね。みんなに確認もしてないのにさ、「辞めない」のを前提にした言い方しちゃって…(笑)。

――(笑)もしかしたら辞めようと思ってる人がいたりして…

十束:辞めるって言うかもしれないのに(笑)。

奥津:もしかしたらいるかもしれない。分からない。けど、いないということを信じて、あんちゃんが人の前で言ったことに意味があると思っていて。それは私たちに対する信頼でもあるし…。

佐藤:考えてなかった、それは。ごめん(笑)。

十束:そうなんだ(笑)。

奥津: あんちゃんの「これからも4人でやっていきたい」というメッセージだと受け取って、私自身もうれしくなりました。

――ねぇ。佐藤さんがあれを言った後に「ちょっと待ってください!」って「卒業発表」でもあったりしたら(笑)。

佐藤:確かに、サプライズで隠してるメンバーがいたら最悪だったよね。

十束:最悪だね。

日向:「このMCの後に言いづらいんですけど、実は…」って(笑)。

奥津:「申し訳ございません…」みたいな(笑)。

十束:良かった良かった(笑)。

佐藤:危なかった。これから気を付けよう(笑)。

――そういう意味では、「しばらくは」とおっしゃいましたけど、どれぐらい「しばらく」なんですかね?(笑)

日向:それはあくまでも物の例えあって、大丈夫です、ずっと(笑)。

パスって切るでもなく、丸くするでもなく、私はティッシュをつまむつもりでやるから、一緒につまんでね(奥津マリリ)

――具体的に曲に関してお聞きします。例えばちょっとアレンジしているものとかもあったじゃないですか。「アイム・アフター・タイム」とか、ジャジーなイントロが付いたりとか。あれ、格好良かったですね。

日向:バンドならではの格好良さがあったと思います。前の曲が「アルゴリズムの海」だったので、そこから結構チルな感じの空気が流れたと思うんですけど、それをさらにいい感じの雰囲気にする。「何が始まるんだろう?」みたいな、多分お客さんの中でもあったと思うんですけど。

――「アルゴリズムの海」も、どちらかと言えば“バンド向き”じゃないじゃないですか。クラブテイストと言うか、そんな感じがあって、バンドでやるのはちょっと意外性があって…。でも、すごくハマってましたよね。

十束:お客さんも「『アルゴリズムの海』良かった」って書いてる人めちゃめちゃいて、私自身もフィロソフィーの楽曲の中で一番好きなんですよ。なので、今回バンドでやることになって、いい感じでバンドっぽくなって、「そういうアレンジのやり方があるんだ」と思って、すごい良かったです。

――良かったですよね。他にどうですか?エピソード的なこととか、なんでもいいですよ。

奥津:なんだろう。「アルゴリズムの海」は、バンドメンバーのみなさんも「なんかこれどうしようね?」と悩んでいた曲だったので、それがすごいいい形でできて良かったなと思います…。

――他には?(笑)

奥津:えぇ~!(笑) でも、他の曲もアレンジとか、「ここでこういうことしてみよう」とか細かい部分はあったんですけど、基本的に割と忠実に再現してくださってて。「アイム・アフター・タイム」の最初の静かなイントロとかは、弾き方とか、楽器をどこまで入れるかとか、当日リハーサルでやりながら「これもっと抑えて弾いた方がいいんじゃないか」とか「休符を入れずに流れるように弾いたらいいんじゃないか」とか色々工夫していたので、私たちの歌もそれに合わせて「ティッシュをつまむように最後切ろう」とか…。

――おぉ!

奥津:ハルちゃんと二人で言ってました(笑)。「なんかこうパスって切るでもなく、丸くするでもなく、私はティッシュをつまむつもりでやるから、一緒につまんでね」みたいなことを言ったりとか、そのアレンジに合わせて歌を相談したりするのも楽しかったです。

――そういうのが聞きたかったんです!

奥津:良かったです(笑)。正解! ありがとうございます!

――あれこそ本当、コード的にもテンションがいっぱい入ったジャジーな感じで、でも原曲はシンコペーションが多用されて、リズムもバシッバシッバシッって切るような感じですが、それを流れるように優しく歌ったわけですね。

奥津:そうですね。ティッシュをつまみましたね。

――なるほどね。そういう点もすごく音楽的ですよね。

どんな衣装を着ても「ダンス・ファウンダー」には意外とハマるなと思って…(奥津マリリ)

――あの前日に、「ダンス・ファウンダー」のMVが公開されたじゃないですか。加茂さん自身も「フィロソフィーのダンスのコンセプトを具現化したもの」っておっしゃっていて。「ポップ・ミュージック・ヒストリーのアーカイブの発見と再解釈」とも。

加茂:そうですね。

――そういう点に関して、皆さんはどうですか? そういう意味では「昔のいいものを伝承する」って部分も僕はあるんじゃないかなって思っているんですけど。皆さんは、そういうものを“背負わされて”いるわけですよ。

一同:アハハハ(笑)

――(笑)どうですか?

奥津:今回いろんな衣装を着て、いろんな衣装で「ダンス・ファウンダー」を歌ったんですけど…。昔のものを受け継いでいるけど、私たちにとってはそれがすごい斬新で。でも、どんな衣装を着ても「ダンス・ファウンダー」には意外とハマるなと思って…。なんかその新しさも感じましたし、「この曲はどの世代でも通じるんじゃないか」という思いも生まれました。

――なるほど。では、他の方にもお聞きしましょう。

十束:その時代を生きてた方にとっては懐かしくて、若い方が見ると元ネタが分からず、何年代か分からない、でも、その年代の音楽が好きになったりするきっかけにもなったりすると思うので、そういう“役割を背負っている”というのも、すごいうれしいですね。私たちをきっかけにして昔の曲を好きになってくれたりとか、ファンクというものに興味を持ってくれている人が増えればいいなって思います。10年後とかにまた撮り直したいですね。2000年代、2010年代、2020年代を生きて、「今、2030年の私たちです」みたいな感じのMVが撮りたいなって思いました。時代は流れて行くので、新しい音楽も全部背負って未来に動いて行きたいなと思いました。

――音楽偏差値20ぐらい上がってるんじゃないですか?

十束:本当ですか? 超頭いいですね(笑)。

――ちょっと元がどれぐらいなのか分からないですけど(笑)。

十束:2ぐらい(笑)。ありがとうございます。

――いや、僕、いつも思うんですけど、例えば世代によって解釈というか、「これが元ネタなんだ」って思い浮かべるものが違うじゃないですか。例えば、最初のモノクロの映像だと、僕はかつてレコード会社でモータウンを担当していたんで、ザ・スプリームス辺りをイメージするんですけど、ザ・ピーナッツって言う人もいるかもしれないじゃないですか。人によって解釈が違いますし、あのネタを元ネタにして作ったものから影響を受けた人もいたりして…。

十束:さまざまですよね。それが楽しい。

――繰り返されるという感じが…。例えば、何年か後に「フィロソフィーのダンスを聴いてファンクに目覚めて、それを元ネタにして何か表現した」という人も出て来ますよね。でも、そこには元ネタがあり、また、元ネタの元ネタがあり、みたいな。

十束:そう思うと楽しい。

――楽しいですよね。そういう意味では、常に新しいダンスが生まれているわけですよ(笑)。

一同:(拍手)

日向:まとまった!

佐藤:すごい!

奥津:もうまとまりましたね。

十束:きれいにまとまりました。ありがとうございます!

――終わった方がいいですか(笑)。一応1人ずつ聞きましょうよ。

日向:作編曲の宮野さんが音楽ナタリーさんに寄せたコメントがすごく良くて。「ダイヤルをひねるとそこには『フィロソフィーのダンス』というチャンネルがあって、時代の移り変わりそのものが新たに映し出される」といったコメントが…。そういう解釈の仕方もあったのか、と、あのコメントを見てすごい勉強になりました。もしかしたら、皆さんからしたら洋楽よりフィロソフィーのダンスの音楽の方が手軽に聴ける存在かもしれないと思っていて…。でも今は、世間的にはまだ知られてないですし、まだまだこれからのグループではあるんですけど…。でも、ファンクとかを広めて行ける存在になりたいですし、アイドルでもこういうことができる、ということも示していける存在になりたいなと思っています。

――宮野さんがそのコメントでおっしゃってたイメージって、今のサブスクで音楽を聴くみたいな感覚と似てるというか…。Spotifyに行けば、昔のものも今のものも等価に並んでいて、それで好きなものをチョイスして。皆さんはある意味「歩くサブスク」みたいなグループですよね(笑)

一同:おぉ~!

十束:すご~い!

佐藤:いいキャッチです(笑)。

――「フィロソフィーのダンス」を聞けば、いろんな時代のいろんな音楽を楽しめるみたいな。皆さんを起点にいろんな時代のいろんな音楽を掘っていってもらえるといいいですよね。佐藤さんはどうですか?

佐藤:こういうMVを撮らなかったら…いろんな衣装とか着て、時代とか考えつつ撮らなかったら…もっと言えば「フィロソフィーのダンス」じゃなかったら、きっとこういう昔の音楽とかにもあまり関心を持たず、多分このまま生きて行っちゃったんだろうなって思いました。「フィロソフィーのダンス」に入って、1曲ずつ元ネタがあって、こういう時代があって今があるんだってことを、このMVでもそうですし、これまでにいただいた楽曲でもそうですし、考えるようになって…。皆さんも過去の音楽を聴き直すきっかけにもなると思うし、私自身も常に勉強の機会になっているので、このMVでさらに改めて考えさせられましたね。「ダンス・ファウンダー」という強力な1曲の可能性をさらに広げたミュージック・ビデオになったんじゃないかなと思います。

――そういう意味でも、ものすごいいっぱいネタが入ってますよね。

佐藤:ぎっしりですよね。それをファンの人が見て、「これ、こういうことなんじゃないかな」みたいに予想したり考察したりしてツイートしてくださってるんですよ。そういうのを見るとこのMVは大正解でしたね。ワンマン直前に公開したのもタイミング良かったと思います。

アーティストっぽい子もいて、アイドルっぽい子もいて、なんか人間臭さが詰まっているグループがフィロソフィーのダンスのいい所だな、って(十束おとは)

――6カ月連続7inchシングルをリリースするじゃないですか。アイドルとしてはとんでもない企画ですよね。

十束:びっくり(笑)。

――加茂さん、これは?

加茂:僕がアナログが好きだっていうのももちろんあるんですけど、フリーライブがやりたくて。気軽に見ていただける機会を作りたかったんですね。それが“裏の目的”だったりもします。

――かつてウェディング・プレゼントというバンドが、7inchアナログシングルを12カ月連続リリースしたんですけど(笑)

加茂:そうなんですか?

――それとは関係ないんですね(笑)。

加茂:それとは関係ないです(笑)。もう1つは、かつてウルフルズを担当していて、当時タワレコの7階がライブスペースだったんですが、ウルフルズはそこでマンスリーでライブをやったんですよ。1回やる度にどんどん人が増えてって、最後入り切らない状態になったんです。それも半年かな。ブレーク直前のことです。そういったイメージもありますね。

――ウルフルズさんのやり方を踏襲するわけですね。

日向:そういうことになりますね(笑)。

十束:すごい大きい話になって(笑)。

――いやいや。皆さんもすぐですよ。

十束:本当ですか? 頑張りますよ。入り切らなくなるのを目標に!

――では、そろそろお時間のようですので、最後に。今、皆さんの目標って何ですか?

佐藤:目標ってどういう目標ですか?

――何でもいいですよ。例えば、会場であったりとか、そういう存在になりたいとか、もっと抽象的なことでもいいですし。『Tarzan』の表紙を取るとかでも(笑)。

佐藤:アハハ。でも、フィロソフィーのダンスとしての一番の目標は…。目標と言うか私は通過点にしてるんですけど、武道館には絶対に4人で立ちたいって思っていて。もう冗談抜きで本気なんです、これは。というか「ここに立たないともうフィロソフィーのダンスとして活動してきた意味がない」ぐらいに思ってます。武道館を通過点にして、4人でこれからもっともっと大きくなっていきたいっていうのが目標です。ずっと前向きに、ファンの方には明るい姿を見せ続けて、「フィロソフィーのダンス」というエンターテインメントを楽しんでもらえるグループになりたいです。アイドル界で右に出る者はいないみたいな。それぐらいの存在になりたいです。

――強気な発言がすごく多くなりましたよね。いいことです!

佐藤:口だけは達者なんです。

――いえいえ。でも、以前から比べても、自信が芽生えてきていて、とてもいい感じですよ。

佐藤:でも、私がネガティブなことを言うと、ファンの人が不安になっちゃうと思うので、これぐらい大きいことを言っておいて、かなった時に「お、やっぱ有言実行じゃん」ってなった方がカッコいいと思うので、言っておきます(笑)。

――書いておきます(笑)。

佐藤:お願いします。

――奥津さんはどうですか?

奥津:いや、目標。今回のワンマンは、バンドメンバーさんやスタッフさんや色んな人の気持ちが詰まったライブで、そこですごく「よいしょ」ってみんなが支えてくれて、もう「わっ」って大きく巨大化して戦ったような感じがあって…。それがシュクシュクシュクと収縮せずにこれからもこの大きさのままずっとずっと戦って行けるように、あの日にいただいた愛で大きくなったことを忘れずに、ずっとずっと戦っていきたいなと思います。もちろん大きな会場とか、もちろん武道館とか、そういった目標はあるんですけど、そこに立たざるを得ない4人になりたいなと思っていて。「もう4人を見たいから、それは集まるよ」って言われるような存在になりたいというか…。目標があってそれを越えていくというより、自然についてくるぐらいの強気な感じでいたいなと思っています。

――ハルさんは?

日向:どうしても立ちたい箱っていうのは正直ないんですけど、さっきマリリが言ったたように、もう自然の流れで大きなステージに立てるようになりたいですね。身近な目標としてはバンドセットでツアーをやること。今回バンドセットは東京でしかできないんですけど、それはもっと多くの人に見せるべきだと思うので、バンドで色んな場所でやりたいです。あと、「アリーナツアーを一緒にやりたい」って言ってもらえたので、それも絶対叶えたいですし、アイドルとかアイドルじゃないとかもこだわらず世に出ていきたいですし、最前線で活躍できるアーティストになりたいです。

――はい。では、十束さん締めてください。

十束:は~い。大きくなりたい、売れたいっていうのは、他のメンバーが言ってくれたのでそれ以外のことを言うと、最近結婚式で私たちの曲を流してくれる方がいたりとか、受験の当日に聴いたよとか、人生の転機で私たちを選んでくれている人が増えているのがめちゃめちゃうれしくて、何年たっても私たちのことを好きって言ってくれる方が増えていけばすごいうれしいなって思います。最近大きなフェスとかに出させてもらって思うんですけど、タイムテーブルがかぶった時に選んでもらえるとめちゃめちゃうれしくて。「こっちとこっちとこれ、どれ行くか悩むけど、やっぱフィロソフィーのダンスだな」って言ってくれるお客さんの気持ちがめちゃめちゃうれしいので、そういう状況になった時も「やっぱ楽し過ぎるからつい選んじゃう」みたいな現場でありたいなって思っていますね。あと、私は“アイドル”としてこのグループを始めたので、もしアイドルと呼ばれなくなって売れたとしても、なんか少しでもアイドルの部分を残しながら、アイドルとしてファンが応援したくなる気持ちみたいなものを大切にしながら、大きくなって行きたいなと思いました。

――なるほど。アイドル観って人それぞれにあると思うんですよね。それに今やもう「アイドル」の定義も千差万別で、「アイドルか否か」という議論も不毛な感じがして…。

十束:関係ないですよね。

――でも、便宜上それを使わざるを得ないところもあったりするんですけど…。そんな中、皆さんは新しいアイドル像を作りましたよね。

十束:アイドルとかアーティストとか関係なく応援しちゃうけど、アーティストっぽい子もいて、アイドルっぽい子もいて、なんか人間臭さが詰まっているグループがフィロソフィーのダンスのいい所だな、って私は思っているので、個人がそれがブレることなく大きくなっていけば、グループとしてのポジティブさとか、なんか元気が出る感じがさらに増幅されて良くなって行くんじゃないかなって思います。

――皆さんはアイドルからはみ出た存在だと思うんですよね。でも、例えば僕のアイドルってマイルス・デイヴィスなんですけど、そういう意味のアイドルもあるじゃないですか。マイケル・ジャクソンがアイドルだって言う人もいると思いますし。今やもう、いわゆる“アイドル”の域を出て、そっちの“アイドル”の域に近づきつつあるんじゃないか、と。いや、もうそれらを一緒にしちゃうみたいなパワーがあるんじゃないですかね。

十束:それでこそフィロソフィーのダンスだと思います。

――ですよね。

十束:素晴らしい! なんて素晴らしいグループなんだ!(笑)

(取材・文:石川真男)

フィロソフィーのダンス 商品情報

アイドル・フィロソフィー / ダンス・ファウンダー(日向ハルver.)(7インチシングルレコード)
発売日:2018年06月27日

¥1,700(税込)

夏のクオリア / 告白はサマー(十束おとはバージョン)(7インチシングルレコード)
発売日:2018年07月25日

¥1,700(税込)

「イッツ・マイ・ターン」&「ライブ・ライフ」
発売日:2018年08月31日

《通常盤》【CD only】¥1,100(税込)
《初回限定盤A》【CD+DVD】¥1,700(税込)
《初回限定盤B》【CD+DVD】¥1,700(税込)

フィロソフィーのダンス プロフィール

2015年、コンテンポラリーなファンク、R&B、哲学的な背景を持つ歌詞をアイドルに歌わせるというコンセプトの元、氣志團、ナンバーガール、ベースボールベアー、相対性理論などを手がけた加茂啓太郎がオーディションとスカウトでメンバーを集め結成。

2016年には早くも東京アイドル・フェスティバル、@JAMという2大アイドル・フェスティバルに出演。
同年11月20日には原宿アストロ・ホールで初のワンマン・ライブを行う。
同月23日にファースト・アルバム「Funky but Chic」をリリースする。
ライムスター宇多丸、マーティー・フリードマン、平成ノブシコブシの徳井健太などから絶賛された。

2017年3月渋谷WWW、同年7月新宿BLAZEでのワンマン・ライブをソールドアウトさせる。
同年11月セカンド・アルバム「The Founder」をリリース。
オリコンウィークリー・チャートで35位となる。
また収録曲「ダンス・ファウンダー」はSpotifyのバイラル・チャートでアイドルとしては初めて1位となる。

2018年2月シングル「ダンス・ファウンダー(リ・ボーカル&シングル・ミックス)」をリリース
、オリコン・ウィークリー・アルバム・チャート33位となる。
同月callmeとの2マン・ツアー「レッツ・スティック・トゥギャザー」を東名阪で開催した。

6月16日に恵比寿リキッド・ルームで初のバンドセットでのワンマン・ライブを開催する。
この日のライブを一流ミュージシャンにサポートしてもらいDVD化するために行ったクラウド・ファンディングは目標金額の300万を一晩でクリアーし、最終的には1,000万超を達成。また、6月30日名古屋、7月1日大阪でのワンマン・ライブを含む東名阪ツアー全3公演をソールドアウトさせ、大成功に収めている。

メンバー プロフィール

十束おとは Totsuka Otoha

誕生日8月9日
獅子座
血液型A型
出身地 神奈川県
Twitter:@ttk_philosophy

日向ハル Hinata Haru

誕生日1月16日 
山羊座 
血液型B型 
出身地 東京
Twitter:@halu_philosophy

奥津マリリ Okutsu Mariri

誕生日7月11日 
蟹座 
血液型O型 
出身地 神奈川県
Twitter:@philosophy092

佐藤まりあ Sato Maria

誕生日9月13日 
乙女座 
血液型B型  
出身地 埼玉県
Twitter:@_satomaria


公式サイト
http://danceforphilosophy.com/

公式ツイッター
@DFP_2015


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